表題番号:2007B-029 日付:2008/03/25
研究課題乳幼児の共同注意の発達過程の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 大薮 泰
研究成果概要
視覚対象(鯨の縫いぐるみ)と聴覚対象(鳥の鳴き声)に対する子どもの関わり時間が、母親の共同注意の有無によって影響されるかどうかを検討した。研究対象は、生後9-12か月が24組、15-18か月が24組、21-24か月が22組、27-30か月が22組の4群からなる計92組の母子のペアであり、プレイルームでの母子の共同注意場面がビデオ記録された。各母子のペアは、視覚対象である鯨の縫いぐるみ場面と聴覚対象である鳥の鳴き声場面のどちらにも参加した。両場面の間には異なるテーマの遊び場面が挿入され、鯨場面と鳥場面の前後は対象母子ごとにランダムに配置された。視覚対象の場面は、自由遊び場面(2分間)、鯨の縫いぐるみが出現するが母親が気づかない振りをする場面(30秒間)、母親が鯨に気づき子どもと共同注意する場面(1分間)、鯨が見えなくなり母親が鯨を子どもと一緒に探す場面(2分間)の順に構成されている。同様に、聴覚場面も、自由遊び場面(2分間)、鳥の鳴き声が聞こえるが母親は聞こえないそぶりをする場面(30秒間)、母親が鳴き声に気づき子どもと共同注意する場面(1分間)、鳴き声が聞こえなくなり母親が鳥を子どもと一緒に探そうとする場面(2分間)の順に行われた。主要な結果を以下に示す。1.鯨の縫いぐるみという視覚刺激に対する関わり行動は、母親の共同注意というサポートの有無に関わらず、月齢の増加にともない顕著に長くなった。2.鳥の鳴き声という聴覚刺激に対しては、母親の共同注意の有無によって、子どもの聴覚刺激に対する関わり行動の長さが異なった。すなわち、母親が気づかない振りをすると、子どもの関わり行動は短く、且つ、月齢の増加しても視覚刺激ほど長くならなかった。3.母親の共同注意というサポートが入ると、聴覚刺激に対する関わりも月齢の増加にともない長くなり、月齢27-30か月群では関わり時間にほとんど差がなくなった。