表題番号:2007B-014 日付:2009/05/27
研究課題共有大陸棚資源をめぐる国際法的解決の可能性―日中・日韓間紛争を素材として
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 島田 征夫
研究成果概要
 2007年度早稲田大学特定課題研究費のテーマとして、「共有大陸棚資源をめぐる国際法的解決の可能性―日中・日韓間を素材として」を申請し、研究費の交付を受けました。そして、2008年3月に「19世紀における領海の幅員問題について」(早稲田法学第83巻第3号)と題する論文を完成させました。
そもそも、日中、日韓間の大陸棚資源の問題は、大陸棚資源と排他的経済水域資源の分布状況が重なり、両国間でなかなかよい解決方法が見いだせない困難な問題の1つです。その原因がどこにあるかというと、大陸棚の幅(開発可能性)と排他的経済水域の幅(200カイリ)が異なるからです。こうした食い違いは、かつても存在していました。それが、上記拙稿で取り上げた領海の幅員問題だったのです。簡単に言えば、領海の幅員について、着弾距離説と3カイリ説とが対立していた問題です。19世紀の初めに2つの学説が対立していた事実があります。
上記論文は、領海の幅員の歴史を追い、グロティウス、プーフェンドルフ、バインケルスフークの流れを確認し、バインケルスフークの主張した着弾距離説に焦点を当てました。着弾距離という「技術」を領海幅員を画する基準としたわけです。この点が、1958年大陸棚条約で、開発可能性という「技術」を大陸棚の幅を画する基準とした事実と重なるわけです。この関係の詳細は、拙稿65―66頁に説明してあります。
かつて領海をめぐる困難な問題を解決した国際法が、現在の共有資源問題にも有効な示唆を与えることができるのではないかと考え、研究を進めている次第です。