表題番号:2007B-011 日付:2008/03/24
研究課題ローカル・マニフェストの評価手法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 北川 正恭
研究成果概要
 昨年2月に公職選挙法が一部改正され、部分的ではあるが、首長選挙において、マニフェストの配布が解禁となった。そのため、昨年4月に行われた統一地方選挙の首長選挙では、多数のローカル・マニフェストが作成された。また、いまだ公職選挙法では認められていないものの、首長のローカル・マニフェストに触発される形で、地方議員のローカル・マニフェストも多数作成された。こうした
ローカル・マニフェストの新たな展開については、マニフェスト・データを収集し、日本インターネット新聞社のHP上で成果を公表している。
 本研究では、こうした制度変更を念頭に置き、統一地方選挙における知事選挙のマニフェストの評価を行った(選挙前における事前評価)。その結果、当選した13人の知事の内、大分県を除くすべての知事がマニフェストを作成したことが明らかになった。ただし、その内容を具体性、時間軸、コスト、わかりやすさ、妥当性の基準で分析してみると、松沢成文神奈川県知事のようにかなりレベルの高いマニフェストから、マニフェストという名前は付いているものの、実際にはほど遠いものまで多種多様であった。この分析は、一つの選挙を対象としたのではなく、複数の選挙を対象に当選した候補者のマニフェストからマニフェスト型政治のモデルを検討するという点で意義があった。
 また、昨年4月10日をもって2年が経過した小林正則小平市長のマニフェスト評価も行った。本評価は、小林市長のマニフェストに掲げられた個別の項目を時間軸の基準で分析し、A達成できたもの、順調に進んでいるもの(58%)、Bやや遅れて達成したもの、やや遅れて進んでいるもの(30%)、Cかなり遅れて進んでいるもの、方針を転換したもの(12%)という結果になった。本評価は、早稲田大学マニフェスト研究所が第1回ローカル・マニフェスト推進大会で行ったものを除けば、東京都下で行われたはじめてのマニフェストの中間評価であること、マニフェストが行政の政策の一部として着実に定着していることなどが意義となった。
(評価結果については、以下参照。http://www.city.kodaira.tokyo.jp/kurashi/004/004544.html)
 最後に、九州地域で進められているローカル・マニフェストの評価活動のヒアリングを行うために、神吉信之ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州代表、古川康佐賀県知事、日本青年会議所九州地域佐賀ブロックの担当者へのヒアリング、熊本県知事選挙の公開討論会の調査を行った。ヒアリングからは、これまでの一般的な評価手法からさらに一歩先の住民と行政を結ぶマニフェストの評価を検討していること、公開討論会の調査からは、公開討論会の設問に新しい評価項目が必要なことなどが明らかとなった。こうした課題については、2008年度以降に行う研究で引き続き検討していきたい。