表題番号:2007A-934 日付:2008/03/25
研究課題脅威認識の形成過程に関する考察:日本の冷戦後の対米、対中認識
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院アジア太平洋研究科 准教授 植木 千可子
研究成果概要

【調査・研究概要】
 日本の冷戦後の対米、対中脅威認識について調べるために、今年度は、安全保障・防衛政策担当者などへのインタビューを実施し、
1990年以降出版された雑誌等の論評を分析した。
 とくに、1995年ごろまでの対中認識、対米認識がどのような原因によって変化し始めたか、また、対米認識と対中認識の連関
などについて調べた。また、2000年頃からいわゆる「中国脅威論」がなぜ顕著になったのか、について探った。

【研究成果】
 現段階での研究成果としては、まず、日本の対米認識の影響の大きさの確認が挙げられる。冷戦後、また、それ以前も含めて、日本
の対外政策は、米国との関係を通して形成されて来た。冷戦後、日本は国際社会や近隣諸国との新しい関係を模索始める。その中で、
米国は日本にとっての世界へのパスポートとして認識されるようになった。
 2000年以降の「中国脅威論」の台頭については、まだ、明確な答えは出ていない。引き続き、検討を進めるが、現段階のファイ
ンディングとしては、対米関係の健全化が挙げられる。1990年代半ばから日米同盟漂流を食い止める動きが政策担当者を中心に現
れた。2000年頃には、日米関係は同盟の再定義も終わり、緊密な関係を再構築するに至っている。それまで、日本政府は対米、対
中両方を改善しようとしていた。つまり、選択肢を出来るだけ増やすような合理的な行動であった。しかし、米国との関係が改善した
ため、日本の対中認識が悪化したと考えれる。