表題番号:2007A-930 日付:2008/03/31
研究課題日本におけるパスカル受容ー三木清の例からー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教養学術院 准教授 檜垣 樹理
研究成果概要
 昨年4月に新任で教え始めたため、研究環境の整備にまず時間を費やすことになった。前任校で購入した書籍はすべて返還しなければいけなかったため、基礎的書物もふくめてかなりの数の書籍の購入が必要となった。(フランス語文献については夏に購入したが、予算切れとなり、日本語文献については、まだまだ不足している。)
 8月15日から9月14日までフランス滞在中には、図書館と書店をまわり、文献収集を行った。三木清のヨーロッパ滞在中の読書、講義などを追跡し、ハイデッガー、アウグスチヌス、キエルケゴールなどの影響とパリで執筆した『パスカルにおける人間の研究』の関係について、緻密な検証を行うため、三木清がパリに滞在した1925年当時の文献に触れる事のできるフランスでの研究は貴重である。国立図書館に加えて、今回は、特にパリのセーブル神学大学図書館の協力を得て文献検索を行った。三木が1923年から聴講した若きハイデッガーの講義も読む事ができた。パリで聴講したパスカルについての講義についても確認することができた。現地の共同研究者との話し合い、議論もした。
 3月2日から3月19日まで再びパリで研究期間を持つ事ができた。今年8月の国際シンポジウム発表に備えて、三木清の属する、京都学派哲学が、フランス哲学界、日本研究者においてどのように解釈され議論されているか、どのようなコンテクストで、三木清のパスカル論を論ずる事ができるか、東西文明の対話にどのように貢献できるか、という事にターゲットをあてて、現地研究者とのディスカッションも含めて、重要な考察を得た。
 学期中は、初年度でもあり、国際教養学部の唯一のフランス語専任としての職務をはじめあまりにも多忙で、研究に費やせる時間がほどんどなく、残念ながら研究内容に(望んでいたほど)大きな発展があったとは言えない。今年度は、昨年度よりは、研究に身を入れる事のできる環境となることを希望している。国際会議での研究成果の発表があることもあり、ぜひとも、この研究を続け、実りある貢献をしたい。