表題番号:2007A-913 日付:2008/04/02
研究課題文化的施設の不満と魅力に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 小島 隆矢
研究成果概要
本研究課題担当者は、公共建築施設の整備プロセスに顧客ニーズ調査、満足度調査を導入するための研究を行っており、その成果の一部は国交省営繕部の業務の一環として定着している。この取り組みは各方面より注目を集め、特に現在、いわゆる“箱物行政”批判、事業評価の実施等を背景として岐路に立たされている、博物館型施設(博物館、美術館、動物館、水族館)、劇場、図書館など-これらを文化的施設と呼ぶことにする-の評価や改善に用いることが期待されている。
本研究では、上記の要請に応えるための基礎的検討として、利用者アンケートに基づき、文化的施設に対して利用者が感じる不満と魅力の形成要因を把握することを試みた。主要な研究内容・成果概要を以下に記す。
1)既存の調査データの分析
国交省営繕部および国土技術政策総合研究所、(独)建築研究所などがこれまでに実施した文化的施設に関するいくつかの顧客ニーズ調査、CS調査のデータを入手し、データの再整理・分析を行った。主に博物館型施設の自由記述の設問を分析対象として、施設に対する不満・魅力を表す評価語を抽出し、施設種別、利用目的、利用様態(頻度、同行者等)などとの関連を分析した。不満の内容は魅力の内容に比べて施設種別による違いが小さいことが示唆されるなど、いくつかの興味深い結果が得られたので、分析結果の一部を第35回日本行動計量学会大会にて発表した。
2)評価グリッド法による定性調査
授業における実習課題の一環として、受講者の身の回りの人を対象に、文化的施設に対するニーズについて評価グリッド法を用いたインタビュー調査を実施した。その結果を概観したところ、文化的施設が利用者等にもたらす価値を考える際、近年、マーケティング分野で注目を集めている「経験価値」という概念が役立つのではないかと思われた。現在、文化的施設の経験価値をテーマとして、さらに発展的な研究計画を立案し、競争的資金を申請中である。