表題番号:2007A-865 日付:2011/03/07
研究課題種々の連続抽出法の比較による鉛汚染土壌における汚染形態分析法の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 専任講師 所 千晴
研究成果概要
発生源の異なる2種の鉛汚染土壌(建設工場跡、化学工場跡)に関し、それぞれの土壌の基礎物性、土壌からの酸による溶出特性、Tessierらによる連続抽出法、さらにはSpositoらによる土壌表面のイオン交換能および表面錯体容量を実験的に把握し、それぞれの土壌のキャラクタリゼーションを行った。
粒度分布に関しては、建設工場跡では20μm以下の細粒が多く、化学工場跡ではそれ以上の中粒が多いことがわかった。また、塩酸や王水を用いた溶出量では、建設工場跡では1.18mm~の粗粒で溶出量が多く、化学工場跡では20μm以下の細粒で溶出量が多い結果となった。また、建設工場跡の土壌は王水分解によって鉛の全体量の40%しか溶出しないことから、ケイ酸塩鉱物を代表とする鉱物が多い、反応性に富まない土壌であることがわかった。一方、化学工場跡では王水分解によって鉛の全体量の70%が溶出した。
これらの結果と、Tessierの連続抽出法の結果とを比較すると、建設工場跡では、炭酸塩態、酸化物態、および残渣(ケイ酸塩鉱物や非分解性物質)中の鉛が多いことが分かった。特に、残渣分が半分以上を占めており、前述の酸溶出特性と同様の傾向が得られた。また、化学工場跡では、炭酸塩態、有機物態、酸化物態中の鉛がほぼ同程度存在しており、一般の汚染土壌に比べて有機物態の割合が高いことがわかった。これは、化学工場由来の有機物に起因していると考えられる。
さらに、Spositoらの方法により、土壌中のイオン交換能と表面錯体容量を実験的に検討したところ、両者の土壌において、イオン交換能が2~7mmol/kgであったのに対し、表面錯体容量は20~35mmol/kgであった。Tessierの連続抽出法の結果においても、両者の土壌ではイオン交換態の鉛が少なく、鉄・マンガン酸化物中の鉛が比較的多かったことから、鉛分は鉄・マンガン酸化物中に表面錯体として取り込まれているものが多いと考えられる。
以上の結果より、複数の分析法を組み合わせることによって、土壌の詳細なキャラクタリゼーションが可能であることが確認された。