表題番号:2007A-862
日付:2008/03/22
研究課題海洋生物由来血管新生阻害剤の探索
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 理工学術院 | 准教授 | 中尾 洋一 |
- 研究成果概要
- ユニークな構造と強烈な生物活性を有する化合物を豊富に含むことが知られる海洋無脊椎動物を
探索源として、がんの増殖・転移に深くかかわることが知られる血管新生を阻害する新規化合物
の探索研究を行った。
1.まず、日本各地(鹿児島から青森までの5か所)において海洋無脊椎動物サンプルの採集を
行い、約200検体のサンプルを採集した。
2.次いで、これらのサンプルをアルコールで抽出し、水とクロロホルムで二層分配後、濃縮し
てそれぞれの層を水溶性画分および脂溶性画分とした。これらの各分をさらにC18のカラムを用
いた固相抽出法にてそれぞれ6つに分画し、最終的に約2000のスクリーニング用サンプルを
調製した。
3.調製したスクリーニングサンプルについては現在血管新生阻害活性スクリーニングを開始し
ている。
4.血管の管腔構造構築を阻害する活性を有する鹿児島県産Sinularia属の軟サンゴから、活性
本体として、新規オキシリピンを単離構造決定した(投稿中の論文参照)。
5.また、鹿児島県産のMicale属の海綿から単離していた血管新生阻害作用を有するヒストン脱
アセチル化酵素(HDAC)阻害剤azumamideについて、京都大学山中らによって開発された人工多
能性(iPS)細胞を用いた血管再構築系によって抗血管新生作用を調べ、顕著な血管新生阻害活
性を見出し報告した(世界最初のiPS細胞を用いたケミカルバイオロジー研究の論文)。
以上の研究を通して海洋無脊椎動物の血管新生阻害剤探索源としての有望性を示すことができた
と同時に、現在世界中で極めて熾烈な研究競争が行われているiPS細胞の研究においても世界に
先駆ける研究成果を挙げることができた。