表題番号:2007A-860 日付:2010/05/03
研究課題サステイナブル建築のプロセスマネジメント研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 高口 洋人
研究成果概要
 本研究では、サステイナブル建築のプロセスマネジメント研究の一環として、屋上緑地の導入理由および経緯、管理状況、問題点を把握するため、屋上緑地を有する建物の所有者に対して屋上緑化の維持管理・運営に関するアンケート調査を郵便調査法により実施した。送付数は301件で回収数は64件、回収率は21.3%、回答数は57件であった。回答が得られた建物においては、屋上を全面的に緑化している例は無く、平均緑化率(緑化率=屋上緑地面積/屋上面積)は21.6%であった。施工件数、合計緑地面積ともに100~500㎡未満の物件が最も多く、26件で、その合計緑地面積は9,785㎡であった。
 その導入目的であるが、全体では「ヒートアイランド対策」、「省エネ対策」、「条例への対応」の回答割合はそれぞれ18%、15%、15%の順に多い。また「その他」では、教育文化施設の建物の照り返しの緩和や、緑地の確保、環境教育の場があげられており、屋上緑化による環境改善効果に期待していることがわかる。用途別で見ると、商業施設以外の用途の環境改善効果に関する回答は、ほぼ同じで全体の半分近くを占めている。一方、商業施設は、「建物利用者から見た景観の向上」、「建物利用者への景観の向上や憩いの場の提供」などの、屋上緑化による利用者へ効果が環境改善効果に関する回答に比べて、多くを占めている。
 その他特徴的な動きとしては、商業施設を中心に屋上緑化複合利用をした事例が見られることである。代表例としては、六本木ヒルズ、難波パークスなどが挙げられる。それらの施設では屋上緑地を地域住民やNPOなどに積極的に開放し、農地利用やイベント会場などに活用しており、屋上緑地を複合的に活用しようとする動きが見られる。
 次年度においてはこの複合利用の計画、運用状況について詳細な調査を行い、その中からプロセスマネジメントに関する普遍的な知見を得たいと考えている。