表題番号:2007A-852 日付:2008/03/10
研究課題ジェット噴射による極低温熱交換器の着霜低減に関する基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 佐藤 哲也
研究成果概要
液体水素燃料を冷熱源とした熱交換器(プリクーラ)の問題である冷却管への着霜問題を解決することを目的とし、空気ジェットによって霜層を吹き飛ばす手法を提案して、実験的に実証した。過去の研究より、層の性状は冷却面温度に大きく影響を受けることが分かっており、冷却面温度をパラメタとして、霜の性状とジェットによる吹き飛び効果の関係を調査した。

実験方法を以下に述べる。SUS製の熱交換器に冷媒を供給し、調温調湿空気供給装置から供給される湿り空気と熱交換させる。熱電対と差圧計により熱交換器の熱交換量と全圧損失を計測することにより、熱交換器の性能を定量的に評価した。冷媒としては代替フロン系冷媒および液体窒素を使用し、冷却管表面温度は、Tw =250, 220, 83 Kの3種類とした。空気側の速度は着霜していないときに1 m/sとし、ジェットの速度は、冷却管の前面において36 m/sとした。

以下に、実験結果を示す。ジェットによる除霜をしない場合、全圧損失は冷却面温度Twが低いほど大きく、実験開始後100秒時において、Tw = 80 Kの場合は、Tw = 250 Kの場合の約10倍の全圧損失上昇となった。ジェットを間欠的(50秒に1度)に噴射し除霜を試みた結果、Tw = 80 Kの場合は、噴射した瞬間には着霜のないときとほぼ同じ圧力損失に回復した。すなわち、本手法の除霜の効果は確認された。一方、Tw = 220 Kの場合には除霜の効果は弱く、Tw = 250 Kに至っては効果は見られなかった。これは、表面温度が高い場合には、霜層の表面温度が上がり、液相となり、それが霜層内部に浸透することにより、密度が大きく固い霜層になることが原因であると予想した。しかしながら、先に述べたように、Tw = 250 Kの場合には、霜層による圧力損失自体が小さいことより、問題は小さいと考える。

今後は、実際の熱交換器に近い形で定量的な調査を行う一方で、エンジンの圧縮機からの抽気をジェットとして利用するシステムを構築する予定である。