表題番号:2007A-851 日付:2008/04/04
研究課題ペプチドー蛋白質結合インターフェイス解析のための新規光ラベル法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
ペプチド-タンパク質間の相互作用の解析法のひとつとして、photo-affinity labelingが用いられてきた。これまでに我々は、p-benzoylphenylalanine(Bpa)を含有するペプチドとタンパク質のphoto-affinity labelingにより、結合インターフェイスの同定を試みてきた。しかし、クロスリンク産物を酵素消化することによって生じるペプチド断片が大きいため、質量分析による構造解析が困難であった。そこで、本研究では、光反応性のアミノ酸として、Ser(O-p-benzoylbenzyl)(=Ser(BP))に着目した。このアミノ酸は切断可能なベンジル型側鎖官能基を有している。このため、クロスリンク産物からペプチド鎖を切り離すことにより、酵素消化後に生じるペプチド断片を小さくすることができる
モデル系として、カルモジュリンとそれに結合する17残基のアミノ酸からなるペプチドを用いた。①Ser(BP)残基を組み込んだカルモジュリン基質ペプチドをFmoc固相法により合成した。②ペプチドとタンパク質の光クロスリンクを行い、tricine-SDS PAGEにより分析した。③ペプチドについて、トリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)/トリフルオロ酢酸(TFA)系でbenzoylbenzyl基切断反応を行い、逆相HPLCにより分析した。
まず、Ser(BP)含有ペプチドはカルモジュリンとの特異的な結合に依存して、光架橋できることが確認できた。次に、Ser(BP)含有ペプチドをTFMSA/TFA処理した結果、Ser(BP)残基の側鎖benzoylbenzyl基が切断された。以上の結果より、Ser(BP)残基は、合成ペプチド中に組みこめて、タンパク質との間で光クロスリンクが可能であること、また、ペプチド中のSer(BP)残基の側鎖部分を酸により切断できることが明らかとなった。