表題番号:2007A-819 日付:2008/03/12
研究課題戦後青年期教育史研究における歴史枠組みに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 助手 阿比留 久美
研究成果概要
本研究は、1960年代以降低迷を続けている社会教育における青年期教育の歴史枠組みを検討し、青年期教育再構成のための一視点を模索することを課題とした。
その結果、就労・労働の問題が常に青年期教育をとらえる重要な視点として存在していることと、農村青年や就職のために都市に流入してきた青年といった具体的な対象が1970年代以降社会教育における青年期教育では見失われたままに実践が進められてきたことがわかった。その結果、社会教育における青年や青年集団に対する枠組みの変化は指摘されつつも、青年や青年集団の変化に対応する「あらたな青年期教育の再編成」の構図はほとんど提示されていないことがあきらかになった。
しかし、現在学校から社会への〈移行期〉の危機を抱える青年の問題が顕在化しており、青年期教育の具体的な対象が再びたちあらわれていると考えられる。〈移行期〉の青年が成人していく道筋を見通していくためには、対処療法的なかかわり・実践ではなく、統一的な道筋のもとに実践が行われていくことが必要であり、あらためて「あらたな青年期教育の再編成」が求められているのが現代である。
「あらたな青年期教育の再編成」のために重要と考えられる視点としては、2点挙げられる。第一に、学童期・青年期・ポスト青年期を通呈した視点のもとに、医療・保健・福祉・教育・労働といった包括的領域にまたがる総合的組織化の道筋をさぐり、狭義の「社会教育」に限定されない支援のあり方を視野に入れることがあげられる。第二に、市民性(シティズンシップ)教育を軸にした青年期教育のあり方の追求があげられる。
その具体的方法を描くための今後の課題として、自立支援施策や勤労青年を対象とした諸施策に目を向けて、理念や方法において青年期教育施策との連関の有無を調べていくという点があげられるだろう。