表題番号:2007A-815 日付:2008/03/26
研究課題契約法の領域における外観の作用について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 助手 山城 一真
研究成果概要
 1 私は、本課題につき、「契約が成立していないにもかかわらず、契約が成立したのと同様の状態を『救済』として実現することができるか、また、そうすべき場合があるか」という視角から、次の要領で研究を行ってきた(以下、おおよその時系列順)。
 まず、問題の外延を把握するため、日本における議論状況を確認した。そのうえで、議論を深化する視点を得るため、フランスにおける「外観法理」をめぐる議論の成果を摂取することに時間を費やした。具体的には、現時点のフランスにおける同法理の一般的な議論状況を確認したうえ、検討対象を絞り込み、大きく分けて、第一に、近時提唱されている外観法理の適用領域拡大を志向する解釈論(および「準契約法理」)の展開、第二に、表見委任法理の成立過程について検討を行った。
 2 上記研究の成果・今後の課題は次のとおり。
 近時の解釈論について。近時、破毀院は、契約の成立を認められない事例において、それと同等の結論を承認するために「準契約法理」を活用しているところ、これをめぐって、まさに上記関心に符合する議論が学説において行われている。「外観法理」を含め、いくつかの注目すべき見解に触れ、検討を加えたが、なお考察を深める必要を感じている。
 表見委任法理について。古くは、①委任の終了を第三者に周知しなかったこと、②不適切な者を受任者として選任したこと、の二点が責任の根拠(「帰責性」の内実)とされてきた。1962年の破毀院判例以来、表見委任が成立するために、本人の帰責性は不要であるとの解釈が根付いているが(その理由についても種々の示唆深い洞察に触れた)、これに対しては種々の疑問が提起されつつある。①の視点を再評価し、情報提供義務論との連続性を窺わせる見解がみられることは、上記問題関心に重大な示唆を与えた。
 3 以上の成果については、年度末に学内の研究会報告の機会をもったほか、今後、さらに考察を深め、論文にまとめる心算である。