表題番号:2007A-810 日付:2011/04/08
研究課題変動期における公務員制度改革の影響に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 稲継 裕昭
研究成果概要
 2006年安倍政権誕生後の公務員制度改革の動きは、2007年国家公務員法改正に一部結実し、その後、7月に制度懇の設置、2008年1月に制度懇の報告とめまぐるしい動きを示した。この間、公務員バッシングが絶えることはなく、やや片面的な改革論議が渡辺行革担当大臣を中心に進められた。他方、この改革に慎重姿勢を示せば「抵抗勢力」とマスメディアにレッテルを貼られてしまうことから、制度全体を見渡した根本的な議論は置き去りにされてきた。
 本研究では、そもそも、何のために公務員制度改革を行うのか、それは、どのような結果をもたらす可能性があるのか、という点について、検討を進めた。同時に、諸外国の公務員制度のうち、アメリカ連邦公務員制度の現地調査(2007年11月、7か所)、英国国家公務員制度の調査(2007年12月、9か所)を、人事院と連携をとって進めた。
 検討の結果、まず明らかになったことは、制度懇を中心に進められた議論、とりわけ渡辺大臣の発言に対しては、現職公務員のみならず、それを目指そうとする有為の若者に明らかにマイナスの影響をもたらしているということである。
 第2に、改革論者が依拠する「諸外国公務員制度」は必ずしも十分に調査されたものではなく、かなり我田引水が目立つ点である。改革論者は、他国と部分的に比較した場合の日本の公務員制度のデメリットをあげてその改革を唱えるが、諸外国から見た場合は、むしろ日本の公務員制度に羨望のまなざしが向けられている。その点が無視された議論が進められていることがわかった。
 なお、行革大臣の目指すところが、1989年以降のニュージーランド国家公務員制度改革にかなり類似点を有していることから、その改革の成果と失敗について、2008年3月末に調査を行う予定(8か所程度)である。