表題番号:2007A-501 日付:2012/07/17
研究課題虚弱高齢者に対する筋力向上トレーニングの効果を検証するための無作為化比較対照試験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 准教授 岡 浩一朗
(連携研究者) 総合研究機構エルダリーヘルス研究所 客員研究助手 柴田 愛
研究成果概要
本研究の目的は、虚弱高齢者を対象に、自宅でも実施可能な抗重力筋を鍛えるための筋力向上トレーニングと、目標設定やセルフモニタリングなどの行動変容支援を組み合わせたプログラムを開発・実施し、その効果を身体的側面、心理的側面、行動的側面および転倒関連の側面から検討することであった。介護予防健診を受診し、老年症候群のリスクを保有する65歳以上の虚弱高齢者で、プログラムへの参加に同意した35名を、性、年齢、老年症候群リスクを調整しながら、自重負荷筋力トレーニング群(筋トレ群:18名)、介護予防教育講座群(講座群:17名)にランダムに割り付けた。両介入プログラムとも、週1回、1回90分のセッションを12回(初回および最終回は効果測定)実施した。その結果、身体的側面では握力、椅子立ち座りが筋トレ群で、移動能力(TUG、通常および最大歩行速度)は両群ともにプログラム終了後に有意な改善が認められた。心理的側面では、両群ともにSF-36日本語版の8つの下位尺度のうち、心の健康を除く全ての項目(身体機能、役割機能-身体、身体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、役割機能-精神)が有意に改善した。行動的側面は、自己報告による一日平均歩行時間について、筋トレ群で有意な改善が認められた。転倒関連指標は、両群ともにすべての指標において有意な改善はみられなかった。以上のことから、本研究で実施した筋力向上トレーニングプログラムは、短期的ではあるが身体的側面、心理的、行動的側面に効果をもたらしたと考えられる。一方、プログラム開始から1年後まで追跡調査を行った結果、各側面において有意に改善していた多くの指標において、効果の維持が認められなかった。これらの結果から、長期的な効果の維持をもたらすような支援、特に運動習慣の定着をさらに促すような働きかけを介入プログラムに積極的に導入していくことの必要性が示唆された。