表題番号:2007A-091 日付:2011/11/24
研究課題国際法に対する最近の米国の姿勢とその外交政策
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教養学術院 准教授 池島 大策
研究成果概要
 本研究は、昨年度の研究「国際社会における法の支配に対する米国の対応―裁判関連の国家実行を中心に―」(2006A-926)を基礎として、それを米国の外交政策との関連という視点から分析しなおし、どのような変遷(特に、政権の変遷との関係で)を遂げてきたかを探ることを主要な目的として行われた。
 今日のように、テロリズムが非国家主体によって予測不能な状況下で行われる場合、米国のような大国は、自国の能力に応じて、国際組織などを通じた多国間外交の枠組み(多国間外交交渉)を通じた解決よりも、迅速かつ直接的に自国の国益保護(特に、国家安全保障)のための外交方針を遂行できる方策を一方的に貫徹することに一層の比重を置く傾向が見られる。
 国際社会における法の支配を徹底することがいずれの国・地域・社会をも平和と安定に導くものであるとはいえ、冷戦後に世界で唯一の超大国となった米国にとっては、国際化・グローバリゼーションが進んだ国際社会に対する外向きの視点よりも、むしろ自国の国益追及を重視した内向き思考がより多くの支持を得る国内状況・国民感情が蔓延していることがうかがい知れる。
 以上から、以下の諸点を指摘したい。(1)今世紀のブッシュ政権の外交政策に見られる単独行動主義は、その遠因の一つとして、その前のクリントン政権の際の外交上の限界に対する反動もあって、根底で通底している;(2)多様化した国際社会・国際情勢に、米国国内の多様な見解を適切に集約して具体化する政策や方途が効果的に対応しないような状況が多くなっている;(3)これらの側面は、環境保護、国際刑事裁判、テロ、移民、核兵器を含む軍備管理、中東和平問題、イラク戦争とその戦後処理などにおける法と政策の相克において非常に顕著に見られ、大統領選を年内に控えた米国の選択が注目される。