表題番号:2007A-051 日付:2010/11/04
研究課題抗腫瘍性抗生物質(+) -ophiobolin A の効率的不斉全合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
5員炭素環である ophiobolin A のA環部分の立体選択的合成法の確立に成功した。Sharpless 酸化により得た光学活性エポキシアルコールをビニル Grignard 試薬と反応させ、合成したホモアリルアルコールをTBDPS基で保護し、ring-closing metathesis によりシクロペンテン誘導体に変換した。この化合物のブロモヒドリン化反応は位置選択的かつ高収率で生成物を与えた。次いでその生成物をDess-Martin 酸化することによりブロモケトンとし、これまでに合成した ophiobolin A のCD環部分フラグメントとのカップリングを行った。ophiobolin A のCD環部分フラグメントの水酸基の保護基(Piv)の安定性との兼ね合いから、反応条件の温和な Rreformatsuky タイプの反応を検討した。種々の条件検討の結果、トリエチルボランによるホウ素エノラートを経由するカップリングに成功した。カップリング体は、Burgess 試薬を用いて脱水し、高収率でエノン体へ変換した。ケトンのメチル化を行う前にエノンの水素添加を行うと、生成物のシクロペンタノン環の特性から水素添加により新たに生じる不斉中心が容易にエピメリ化すると予想された。そこで、立体選択的メチル化後に水素添加によるAB環縮環部位の構築を行った。メチルアニオンのケトンへの付加は、立体的に空いた側から進行し、所望の生成物を与えた。引き続き行った水素添加反応はラネーNiを触媒とする反応条件下、高立体選択的に所望の還元体を高収率で与えた。得られた化合物から数工程を経てケトアルデヒドを合成し、ピナコールカップリングによる8員環閉環反応を検討したが、8員環の形成は認められなかった。そこで、現在、Ring-Closing-Methathesis、および低原子価金属試薬を用いる carbonyl-yne coupling 反応による8員環閉環反応を検討中である。一方、本研究の過程において、pig liver esterase によるdimethyl 2-aryl-2-methylmalonate の不斉加水分解が高エナンチオ選択的に進行することを偶然見出し、それをもとに新たなキラルビルディングブロックの創製と(-)-physostigmineの形式不斉全合成に成功した。