表題番号:2007A-049 日付:2008/03/27
研究課題マウス中枢神経時計遺伝子発現に対するドパミン制御機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
体内時計に関わる時計遺伝子は脳に広く発現することが知られている。ドパミン神経の起始核である黒質や中脳被蓋野にも時計遺伝子が発現し、ドパミンの時間機能に関わっていることが知られている。ドパミン神経は報酬系に関わっているため、覚醒剤やコカインの依存性さらにアルコールやニコチンの依存性にも時計機構が関与する可能性がある。そこで今回、時計遺伝子が変異を起こしているPer2ミュータントとClockミュータントを用いて、覚醒剤のメタンフェタミンに対する作用を調べた。その結果、Per2ミュータントのメタンフェタミンに対する行動量増加作用や、依存性に関わるsensitizationについてはワイルドマウスと同程度であり、Per2変異の影響は小さかった。つぎに同様の実験をClock変異マウスを用いて行った。その結果Per2変異マウスと同様にメタンフェタミンの作用にClock変異の影響は見られなかった。次にドパミン神経の活性に関わるドパミントランスポーターの遺伝子発現について調べた。その結果、トランスポーターの遺伝子発現には顕著なリズムが認められ、Per2変異マウスではリズム性が減弱していた。そこでメタンフェタミンのドパミントランスポーターの作用発現に対する作用を日内リズムの観点から調べた。このトランスポーターの発現が低い昼間にメタンフェタミンを投与すると顕著な遺伝子発現の増大が認められ、逆にトランスポーターの基礎発現量が高い時刻にメタンフェタミンを投与しても殆ど影響されなかった。以上の結果、メタンフェタミンの作用には投与時刻による作用の違いが出る可能性が強く示唆された。そこで、Per2遺伝子欠損マウスとワイルドマウスに昼間と夜間にメタンフェタミンを投与すると、ワイルドマウスでは明らかに昼間の投与が顕著であったが、夜間の活動期では作用が弱く、このような昼夜差は欠損マウスでは認められなかった。以上、体内時計はドパミン神経に作用する薬物の昼夜差に積極的に関与することが明らかとなった。