表題番号:2007A-046 日付:2008/03/25
研究課題廃棄物処分場の環境リスク評価に有効な物性値を現位置・非破壊で取得する方法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 香村 一夫
研究成果概要
1.研究背景
わが国において廃棄物に関する法律は成熟しておらず、未だ数々の不備が見つかる。とくに最終処分場に関しては多様な埋立物や不均質な埋立状態を反映して、とくに環境影響評価などで不完全な部分が多い。本研究はこの不完全な部分を指摘するとともに、その欠陥を補充する手法を開発する目的で実施したものである。
2.研究方法
廃棄物層内は非常に不均質であることから、水の透り易いゾーンと透り難いゾーンに区分される。そこで廃棄物埋立層の環境リスクに影響を与える最も重要な因子として埋立層内を浸透する水に焦点をあてた。従来の香村ら(2004、2005)の研究により、この浸透水挙動解明には電気的なパラメータの利用が適当と考えられた。そこで埋立て年代の異なる3ヶ所の一般廃棄物最終処分場でダイポール・ダイポール電極配置により比抵抗探査を実施した。なお、これらのいずれの探査測線でも、5~8年前に同一の方法により、比抵抗断面を求めている。また層内含水量の分布状態を検討するために、上記の一処分場においてRI検層も実施した。これらの実験サイトには廃棄物層を掘削したボーリングコアや観測井が存在しており、埋立物の性状や保有水質の時系列変化の面からも埋立層内を推定することが可能である。さらに、これらの現場の対象データとして、焼却灰をつめた土槽を用いて安定化の把握実験や比抵抗モデル実験を行った。
3.研究結果
現在まで得られた成果は以下のとおりである。①3つの実験サイト全てにおいて、観測井から採取した保有水の電気伝導度や無機イオン濃度は時間経過とともに減少している。反対に各測線に沿う断面の比抵抗は増加傾向を示す。即ち、埋立層内の比抵抗の変化を追跡することにより、無機物の洗い出し等に関する層内安定化の判断は可能である。②廃棄物埋立層内には宙水ゾーンが各所にできるが、これらを比抵抗探査やRI検層によって捉えることは可能である。③廃棄物層内の浸透水挙動と安定化の関係は土槽による実験結果から順次得られる。④一般に行われてきた水処理施設に集水された浸出水質と難透水ゾーンをターゲットとした比抵抗モニタリングの組み合わせで、廃棄物層の環境リスク判断がより正確になることが期待できる。