表題番号:2007A-037 日付:2008/03/21
研究課題中央構造線沿いに発見されたシュードタキライトの年代測定
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 高木 秀雄
研究成果概要
 本年度の研究費で,三重県多気町(伊勢自動車道勢和多気インター付近)で発見された中央構造線の花崗岩由来のシュードタキライトについて,ジルコンを分離し,周囲の花崗岩とともにフィッショントラック年代測定を実施した.測定は,京都フィッションとラック(株)に依頼した.その結果,シュードタキライトは27個のジルコン粒子について60.0±3.5Ma(百万年)という値が,また,母岩の領家花崗岩については,30個のジルコン粒子について70.2±2.7Maという値が得られた.母岩の花崗岩については,ジルコンの閉鎖温度(250℃程度)を考慮すると,同じ花崗岩の黒雲母K-Ar年代と調和的な値である.一方,シュードタキライトは断層の摩擦熱融解で生成した脈状岩石であり,この試料については融解-急冷を経て生成したことがすでに明らかにされている(Shimada et al., 2001).この値が,中央構造線の地震性の高速すべりを起こした年代を意味し,中央構造線における脆性変形の初期の年代を示している.そのことは,四国中央構造線の活断層部の断層ガウジのK-Ar年代として60Maという値の集中があり,その年代と一致していることは重要な意味を持つ.国内で初めてシュードタキライトのフィッショントラック年代が報告された野島断層(兵庫県南部地震を発生させた断層)でも,その値が56Ma(Murakami and Tagami, 2004)であるとされており,今回の中央構造線の結果と近いことは注目に値する.そのほか中部~近畿地方の跡津川断層などの活断層の断層ガウジのK-Ar年代が概ね60-50Maに集中する(Takagi et al., 2005).今回の結果がこの値を指示していることは,西南日本内帯の主要な活断層の発生と,白亜紀後期の花崗岩の貫入後のテクトニクスを考察する上で重要な成果である.
 なお,愛媛県湯谷口で新たに発見されたシュードタキライトについてもジルコンの分離を試みたが,ジルコンは入っていなかったので,三重の試料を優先させた.