表題番号:2007A-004 日付:2009/03/25
研究課題EUにおけるCSR(企業の社会的責任)政策とアカウンタビリティ
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 福田 耕治
研究成果概要
 グローバリぜーションの深化に伴い、企業の国内・国際社会における責任が重視される時代になった。環境や人権などの視点から多
国籍企業の内部管理、およびサプライチェ―ンにおけるCSRの現実はどのような状態にあり、地域的国際機構としてのEUは、域内企業
との関係で、どのような取り組みをしているのか。EUのCSR(企業の社会的責任)政策においても、企業に対して地球環境や人権尊重などの倫理的価値を配慮した行動をとらせるために、法的拘束力あるハード・ローによる規制的手段を用いるのではなく、強制力のないソフト・ローに基づく企業の行動に社会性を与え、自発的に地球公共財供給のために協力させるアプローチをとり、しかも実効性の高い目的実現を図ろうとする。
また、CSRの手段としては、「行動規範」、ラベリング、マネジメント基準、SRI(社会的責任投資)をあげ、「社会的責任」から
アカウンタビリティの確保を重視していることを指摘した。EUの高齢者雇用・社会的排除のリスクとEUのCSR政策EUが持続可能な国際競争力を維持しつつ、発展を続けるために、企業を巻き込む戦略を打ち出したのは、1993年コペーハーゲン欧州理事会での議論がきっかけとなった。この議論を受けて1995年欧州委員会のドロール委員長は、欧州企業グループとともに「社会的排除に反対する企業マニフェスト宣言」を発表した。2000年3月リスボン欧州理事会で採択された前述の「リスボン戦略」では、2010年までに、欧州の国際競争力を強化する戦略の一環として、労働者の働き方、機会均等、社会的結束と政府や企業の連帯が重要であることを強調した。
2001年7月欧州委員会は、「欧州におけるCSR枠組みの促進」と題するグリーン・ペイパー において、企業の社会的責任(Cooperate Social Responsibility: CSR)が「企業が社会および環境に関する配慮を、企業活動とステークホルダーとの相互作用のなかに自発的に取り入れようとする概念 」として定義づけた 。さらに2005年2月に改定された「新リスボン戦略」では、EUの持続可能な発展戦略として、EUの持続可能な経済成長を促進するために、企業が雇用創出とイノベーションのための重要なアクターとして位置付けられ、企業がCSR活動によってステークホルダーと協力して、経済、社会、環境などの社会的貢献を行い、企業活動の透明性を高め、アカウンタビリティを強化して、社会的に貢献することを求めていることなどを明らかにした。