表題番号:2006B-309 日付:2007/02/15
研究課題ナノエレクトロニクスを基盤とした細胞内微小器官・再構築ナノ空間システムの創成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 庄子 習一
研究成果概要
細胞機能解析のため細胞培養と試薬導入による細胞の変化をリアルタイムで計測するマイクロセルを開発している。大量の情報を短時間で収集するため8マイクロウエルを並列化し、それぞれにほぼ同数の細胞を分配導入するマイクロ流体デバイスを試作した。有限要素法を用いた流体解析の手法を有効に活用することにより、流路構造を最適化しほぼ目的の分配が可能なデバイスを作成できた。
細胞内タンパク質の機能を維持したまま取り出すことを目的に、PDMSマイクロバルブを用いた細胞破砕デバイスを新たに開発した。これを用いて、特異的に染色したミトコンドリア持つ細胞をマイクロ流路中で捕捉し、個々のミトコンドリアを観察しつつ細胞破砕を行った。本方法では破砕後もミトコンドリアが脂質二重膜構造を維持しており、ミトコンドリアに対しダメージの少ない破砕方法であることが確認された。これにより、個々の細胞を観察しながら、タンパク質の機能を維持しつつ細胞外に取り出すことが初めて可能となった。
有限要素法を用いた流体解析の手法を有効に活用することにより1入力-2出力の生体分子ソーティングシステム流路構造の最適化を行った。また、サンプル流の両側をキャリア流ではさむ形のシースフローを取り入れることにより、ゾル・ゲル相転移に伴う微小領域の僅かな粘度変化を利用してソーティング可能なデバイスを新規に開発した。これにより、ゾル-ゲル相転移速度のみに律速則される高速ソーティングが可能となった。入力部分に3次元的なシースフローを取り入れることによりサンプル流を底面に絞ることで、ターゲット粒子の分布を流路底面付近に集束させ、生体分子を一個ずつ確実に検出するように工夫した。これらの流路構造の最適化により、検出から分離まで5ミリ秒以内で行える高速ソーティングを実現し、ソーティングエラーも大幅に減少させた。