表題番号:2006B-308 日付:2010/10/19
研究課題学校教育との連携による総合型地域スポーツクラブの運営・実践に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 福永 泰規
研究成果概要
1:2006年度研究概要
 2006年度の実践研究として以下の3つの活動の柱を元に実践する方針を立てた。
  <1>地域スポーツ土壌育成への貢献
  <2>地域活性化への貢献
  <3>地域青少年の健全育成への貢献
<4>教育課程としての総合型地域スポーツクラブの実践
2:研究実践
①アンケート調査の実施
 本庄地域のスポーツ指導における現状把握を深めるために少年野球指導者と中学校野球指導者を対象にアンケート調査を行った。
②アンケート調査の結果分析と課題設定
 今回のアンケート調査の結果から「部員数の確保が難しい」という共通の結果が得られた。原因として「少子化による部員数の減少」という分析をする指導者が多かった。
 しかし、実際のところ「スポーツをやりたくてもできない」小学生も少なくないのではないかと思われる。そこで、少年スポーツチームに所属しない小学生の保護者に「何故スポーツチームに入って活動させないのか」の調査をインタビュー形式でさらに行った。その結果、スポーツをやりたくてもできない、つまり地域のスポーツチームに入らない理由として、「少子化」以外の要素が意外に多くあることが分かった。
 その理由をまとめると以下の6点である。
〔1〕両親の就業形態の変化(学童保育人数の増加)
〔2〕子どもたちだけで行動させることに対する保護者の不安(治安への不安)
〔3〕家族形態の変化(核家族化により平日は自宅が全く不在)
〔4〕休日は家族でゆっくり過ごしたいというライフスタイル
  (つまり、平日は家族で一緒に過ごす時間が少ない)
〔5〕活動場所への移動手段(車での送迎の煩雑さ・自転車移動の不安・大会での送迎)
〔6〕スポーツ少年団での役割への抵抗感(各行事への参加、当番など)
 この結果から、おおくぼ山スポーツクラブのプログラムとして、「平日」「活動場所へクラブスタッフが移動(出前プログラム)」「対外的な試合は行わない」「活動時間限定」などの要素を盛り込んだモデル企画の実践が求められた。
③問題改善プログラムの実践
 アンケート分析の結果から得られた、「平日」「出前プログラム」「対外的な試合は行わない」「活動時間限定」という要素を盛り込んだプログラムを実践した。
 教える側の高校生が「言葉で教える難しさ」をこのプログラムを通じて身をもって体験した。特に、小学生の柔軟な発想に驚き、一人一人の性格の違いに対応した教え方に大変苦労する場面が見られた。このプログラムを通じて「学習に対する態度や考え方、見方が大きく変わった」という変容が「教える側」の高校生に見られた。
④プログラム実践から得られた成果と課題
 本プログラムの成果として、こうした活動をきっかけに「スポーツ好き」で「勉強好き」の子どもが地域に増えることが期待され、児童数が少ないからこそ一人一人の顔が見え、逆に横のつながりが堅固になることが予想される。また、こうした活動が継続されることによって、今の小学生が中学生・高校生・社会人になったときには今度は自分が指導する立場になって地域貢献をするという流れができれば「地域の青少年育成」「地域治安の維持」などの効果も生まれてくると思われる。
 高校生に「教え方」を教育し、実践する場を教員の指導の元で体験することで、「マネジメント能力の育成」という教育効果も期待される。普段は「教えられる立場」の高校生が「教える立場」、つまり準備・企画・実践の過程を経験することによって、自分が授業を受ける立場に戻ったときに、授業の意図を感じ取る能力、授業のポイントを探る能力が高まり、普段自分が受ける授業への効果も期待される。
 そこで、高等学校の教育過程の中にこうしたプログラムを「実践教育」として取り入れ展開することができないかを検証する。

3:学校教育との連携による総合型地域スポーツクラブの実践
①教育課程〈選択教科〉への導入
 現在は部活動の生徒を対象としてしか展開していないプログラムを、授業のカリキュラムとして展開することで、早稲田大学本庄高等学院が有する様々な施設を利用し、より多くの生徒が「地域への貢献」や「生涯スポーツ」「マネジメント能力の養成」といった早稲田大学本庄高等学院ならではの学習を進めることができる。
 そこで、保健体育の選択教科「スポーツマネジメント」〈スポーツクラブ運営実践)を開講し、教育課程として取り入れ、早稲田大学本庄高等学院の教育の一つの特色として展開するに当たっての課題をあげ、それを解決する実践を行った。
②実践への課題
 この選択科目開設にあたり、さしあたっての大きな課題はこのカリキュラムを受け入れてくれる小学校を選定し、交渉を進めることである。
 地域が抱える様々な問題の解決に少しでも近づける試みとして、この選択科目開設が認可され実践されるために、また、より継続的に実践するにあたっての課題をさらに詳細に渡って検討し、準備にあたることが必要である。今後、教育委員会、小学校との連絡・調整を進める。
③残された課題(今後のおおくぼ山スポーツクラブの課題)
おおくぼ山スポーツクラブの活動が早稲田大学本庄高等学院の教育の一つの特色として展開され、さらに地域に根付いたものになるための課題として以下の6つの要因を挙げ今後の研究課題とする。
 (1)おおくぼ山スポーツクラブの理解促進
 (2)地域への広報活動の充実
 (3)地域コミュニティとの連携
 (4)スポーツクラブ運営スタッフの養成
 (5)地域指導者〈アドバイザー〉の養成
 (6)スポーツ指導のサポート活動
 教育課程としての教育効果と総合型地域スポーツクラブとしての地域住民のニーズに応えながら今後の活動を進めていくことが今後の課題である。