表題番号:2006B-271 日付:2007/03/23
研究課題次世代システムLSI設計実装技術の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院情報生産システム研究科 教授 後藤 敏
研究成果概要
H.264のフル・ハイビジョン規格(1920×1080画素)のM.E.エンコーダ用のアルゴリズムを開発するとともに、企業から技術供与を受けたメディアプロセッサーMePを活用してSiSに纏め上げる設計アーキテクチャーの開発を行ない、M.E.処理エンジン搭載のH.264のフル・ハイビジョン規格のエンコーダをSiSとして実現するためのチップ試作を実施した。平成18年10月にチップが完成した。チップは0.18μmCMOSプロセスを用い、チップサイズは5.44mmx4.98mmでロジック部分のゲート数は1.14Mゲート、SRAMは108.3Kバイトであった。SiDRAMは64Mbを用い、ASICとは23Gb/sのインターフェイスで接続した。MePプロセッサーを採用することで、システム全体の制御が容易に実装でき、エントロピー符号化とデブロッキングフィルターをハード化し、エンコーダエンジンとともに、64ビットのAMBAバスで相互を接続した。エンコーダチップは200MHzで動作し、消費尾電力はDRAM込みで1.4Wを達成し、H.264のフルハイビジョン向けの世界で最初に開発したエンコーダチップと言える。VLSI Circuits 2007に論文が採択され、2007年6月に発表予定である。開発したこれらの技術は今後、低消費電力を狙った携帯端末や情報家電に利用でき、共同開発した会社と製品化を図っていく予定である。更に、独自に研究していた画像処理LSI、暗号LSI、符号化LSIなどの技術を統合することにより低消費電力化を図るという提案「超低消費電力メディア処理SoCの研究」がJST・戦略的創造研究推進事業(CRESTタイプ)の情報処理システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術(平成18年度~23年度)として採択された。本事業での成果の情報発信の効果もあり、大手IDMとベンチャー企業の共同研究のテーマが結びついてきている。具体的には画像圧縮、暗号処理、符号化処理の一体化で従来比、1/100の低消費電力を実現しようというもので、個々の技術要素の革新とともに、システム全体の観点から超消費電力を図ることから、大きな注目を浴びている。大学発の技術を北九州学術研究都市に進出したベンチャー企業と大手IDMとで役割を分担しながら技術を育成し、次世代の製品につなげる期待が大きい。