表題番号:2006B-251 日付:2007/02/26
研究課題原始惑星円盤進化と巨大ガス惑星形成について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教養学術院 助手 稲葉 知士
研究成果概要
 ハッブル宇宙望遠鏡などの観測により、誕生したばかりの星の周囲における原始惑星系円盤の存在が明らかになった。赤外線やミリ波の観測から、円盤の温度分布や円盤に含まれる固体粒子の総質量が求められ、円盤中の固体粒子の総質量は中心星の年齢と共に減少している様子も観測された。これは固体粒子が成長することにより,見かけ上固体粒子が減ったように見えるためだと考えられている。
 円盤内のガスは圧力勾配を感じるため中心星重力よりも小さな遠心力で動径方向の力がつりあっており、ケプラー速度よりわずかに遅い速度で中心星周りを回転する。一方、固体粒子は圧力勾配を感じずケプラー速度で中心星周りを回転しようとするため、絶えずガスの向かい風を受け、角運動量を失って中心星方向へと落下する。例えば、半径1メートル程度の固体粒子は,数百年程度で中心星に落下してしまう。そのため、固体粒子が徐々に成長していくと考えると、メートルサイズまで成長した固体粒子は、それ以上成長する前に中心星へと落下してしまう。それ故,現在の巨大ガス惑星のコアを形作ると考えられている固体物質がコアを作る前に失われてしまうという問題が生じる。
 本研究では、原始惑星系円盤進化の際に生成される高圧渦に焦点をあて、円盤外側から落下してきた固体粒子と高圧渦との相互作用に着目した。高圧渦は、宇宙線によってガスがイオン化されないデッドゾーンの外側境界においてロスビー不安定を通して形成されると考えられる。高圧渦は、外側を向く圧力勾配と内側を向くコリオリ力が釣り合って安定に存在する。固体粒子が高圧渦に遭遇すると、渦中心に向くコリオリ力を感じ始め渦中心へと吸い寄せられる。その結果、固体粒子は中心星への落下を止め、渦中心において巨大ガス惑星コアを形成する可能性がある。しかし、このメカニズムを通して実際に巨大ガス惑星のコアが形成可能であるかどうかは、固体粒子の自己重力の効果を考慮しなければならないため、更なる研究が必要である。