表題番号:2006B-236 日付:2007/03/21
研究課題分泌型免疫グロブリンA産生の加齢変化に対する運動の影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 赤間 高雄
研究成果概要
(目的)加齢に伴って免疫機能は低下するが、免疫機能は栄養や運動などの生活習慣の影響をうけるため、高齢者において適切な運動は免疫機能を維持向上させる可能性がある。唾液中の分泌型免疫グロブリンA(secretory immunoglobulin A :SIgA)は、経口的に侵入してくる病原微生物に対する一次的防御機構で主要な役割を担う物質であり、唾液分泌速度と唾液SIgA濃度、および両者の積であるSIgA分泌速度は加齢によって低下する。高齢者の免疫機能にとって適切な運動処方について知見を得るために、高齢者のSIgA産生と身体活動量との関係を検討した。
(方法)東京都三鷹市の前期高齢者67名と後期高齢者124名を対象として、唾液採取は市販の唾液採取器具(サリベット)を用い、1分間咀嚼させて採取した量を1分間の唾液分泌速度とし、唾液SIgA濃度はELISAで測定した。身体活動量はライフコーダを2週間装着してもらい、その平均値を1日あたりの身体活動量とした。以前測定した前期高齢者283名と後期高齢者119名の身体活動量と今回測定した対象者の身体活動量に有意差が認められなかったため、対象者を合算して解析した。
(結果)前期高齢者においては、身体活動量が115kcal/日未満の群に比較して身体活動量が115~250kcal/日の群が有意に高いSIgA分泌速度を示した。身体活動量が250kcal/日以上の群は、身体活動量が115~250kcal/日の群と比較してSIgA分泌速度に有意差はなかった。後期高齢者においては、身体活動量が85~155kcal/日の群でSIgA分泌速度がもっとも高い値を示したものの、85kcal/日未満の群と155kcal/日以上の群とに比較して有意差は見られなかった。
(結論)前期高齢者では身体活動量が115 kcal/日以上であるとSIgA産生が多く、後期高齢者では身体活動量以外の因子がSIgA産生に影響を及ぼしていると考えられる。