表題番号:2006B-234 日付:2009/11/10
研究課題半腱様筋腱の再生機構の組織工学的検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 福林 徹
研究成果概要
「目的」半腱様筋腱採取後には,腱の存在していた空間に形成された血塊中に,腱再生を促進させる因子が存在し,そこに十分な栄養が供給され,さらには適切な力学的刺激が加わることにより腱が再生するという仮説を立てた.本研究ではまず,腱採取後に再生する組織を生化学的および組織学的手法により詳細に評価し,半腱様筋腱採取後の腱の再生過程を明らかにすることを目的とし、再生組織に力学的な刺激を負荷することにより,力学的刺激が組織再生に与える影響についても検討した.
「方法」生後1年の山羊30頭の右後肢から長趾屈筋腱を全身麻酔下にて採取し,採取した腱を移植し同側のACL再建を行った.術後6週,6ヶ月,12ヶ月の各時点で山羊を10頭ずつ,全身麻酔下に屠殺した.本研究においては半腱様筋腱の代わりに長趾屈筋腱を対象とし,腱再生に関する検討を行った.各時点で長趾屈筋腱採取部に再生した組織および反対側の正常な長趾屈筋腱を採取した.採取した組織の一部には,ピーク圧1 MPa,0.5 Hzの静水圧を1日4時間ずつ,4日間に渡り間欠的に負荷した.再生組織と正常腱組織とを比較するため,また,静水圧が各組織に及ぼす影響を調べるため,採取後の再生組織,正常腱組織,静水圧を負荷した組織のそれぞれについて組織切片を作成し,Hematoxylin-Eosin,Elastica Van Gieson,Azan染色を施し,顕微鏡観察を行った.
「結果」再生組織の組織学的所見は,術後6週に採取した組織においても膠原線維組織が存在していた.術後6ヶ月,12ヶ月に採取した再生組織では,術後6週の場合と比較し,膠原線維組織が蜜に存在し,比較的規則正しく配列していた.すなわち,一度腱を採取しても,術後初期段階から腱様組織が再生し始め,その再生組織は術後経過とともに正常腱に類似した組織になっていくことが示唆された.静水圧負荷の有無による差異は,今回の組織学的評価においては確認できなかった.現在はPCR法による遺伝子発現の評価等,生化学的な検討を行っており,静水圧が再生組織に及ぼす影響を含め,組織の再生過程をより詳細に明らかにしていく予定である.