表題番号:2006B-211 日付:2007/03/24
研究課題カハールの介在細胞各サブタイプの細胞学的特性とキット陰性類似細胞の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 小室 輝昌
研究成果概要
カハールの介在細胞(Interstitial Cells of Cajal :ICC)は、消化管筋組織における運動のペースメーカーおよび神経信号の伝達装置として働くことが、従来の研究によって明らかにされているが、その分布や形態学的特徴は消化管の部位によって異なる。本研究では、同一の器官内でも領域によってICCサブタイプの分布に相違を示す事が知られている胃について、ICC細胞網の三次元的構築、神経要素との関係等、詳細な解析を進めるためモルモットを材料として検索した。手法としては、Kit抗体(ICC),PGP9.5抗体(神経要素)による免疫組織化学的染色を用い、共焦点顕微鏡によって観察した。
 輪走および縦走筋層内のICCは部位により相違を示し、胃底部では単純な双極性の形の細胞が多く、胃体部より幽門部にかけては一次突起の先端で分枝を示すものが多く観察された。分枝の傾向は、輪走筋層の内層(粘膜に近い側)でより多く見られる傾向にあった。筋層内のICCは輪走縦走両筋層とも、神経腺維と密接して観察されたが、これは、ICCの神経信号の伝達装置としての機能と良く符号する所見であった。また、幽門括約筋部に近い幽門前庭部の極く一部には、輪走筋層と粘膜下結合組織との境界部にICC-SMが観察された。
筋層間神経叢部のICC-MPは胃底部には存在せず、胃体部から少数出現し、幽門前庭部では非常に発達して認められた。全載伸展標本による観察から、この幽門前庭部のICC-MPは小腸で見られるような神経節を囲む明瞭な籠状構造は作らず、不規則な束状、集塊状をなして分布することが明らかとなった。胃では蠕動運動は胃体部から始まり幽門部に伝播することが生理学的実験から知られているが、これらの生理学的知見との関連のもとに上記の観察所見について考察した。