表題番号:2006B-170 日付:2007/03/25
研究課題ニトロキシド置換ポリノルボルネンの合成と有機ラジカル薄型電池への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 須賀 健雄
研究成果概要
(1) 光架橋ラジカルポリマーの合成と薄型二次電池への応用
 電極としての成形性を付与させるため、TEMPO置換ポリノルボルネンを合成、光架橋を適用した。ノルボルネンジカルボン酸無水物を出発物として4-ヒドロキシ-TEMPOを反応させジエステルへ誘導、Grubbs触媒を用いて開環メタセシス重合し、高分子量体(分子量約2万)を得た。得られた高分子はTHF、クロロホルムなど有機溶媒に可溶で、高い成膜性を有した。ポリノルボルネンの主鎖オレフィン部位へ選択的にビスアジド誘導体を光付加させ、ラジカル部位の損傷なく架橋ラジカル薄膜を得た。ラジカル薄膜はアノード側約0.8 V対Ag/AgClにTEMPOのp型酸化還元対に由来する安定な酸化還元波を示し、膜厚250 nmまで導電補助剤なしでも迅速かつ定量的な電子授受が可能であることを明らかにした。光パターニングにより膜厚、形状を制御したラジカル薄膜が得られ、薄型かつ柔軟なペーパー電池につながることを実証した。
(2) n型ラジカルポリマーの合成と全有機二次電池への展開 
 n型の酸化還元能を有するガルビノキシルラジカルに着目し、負極活物質として全有機二次電池へ適用した。シリル保護したブロモフェノール誘導体をリチオ化、4-ブロモ-1-メチルベンゾエートと反応させガルビノキシ骨格を構築した。Stilleカップリングによりスチレンモノマーへと誘導し、二官能性アクリレートとラジカル共重合させることにより架橋、化学酸化を経てポリ(ガルビノキシルスチレン)を得た。塩基性下、0.1 V (対Ag/AgCl)にn型の酸化還元波を示し、TEMPO置換ポリノルボルネン正極と組み合わせ試作した電池では、それぞれの酸化還元電位の差に対応する0.7 Vに電位平坦部が現れ、両極とも有機ラジカルから成る二次電池の動作をはじめて実証できた。