表題番号:2006B-159 日付:2009/04/21
研究課題ケテンシリルN,Oーアセタールの反応性と反応成績体の構造変換の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 講師 細川 誠二郎
研究成果概要
 申請者は既に、アミノ酸由来の不斉補助基が付いたケテンシリルN,O-アセタールとアルデヒドをルイス酸存在下反応させることにより、delta-ヒドロキシ‐gamma-メチル-alpha,beta-不飽和イミド類を立体選択的に構築する方法を見いだしている。本年度は本反応の向上と、反応成績体の天然物合成を目指した官能基変換に取り組んだ。
 従来、申請者のケテンシリルN,O-アセタールとalpha,beta-不飽和アルデヒド類との反応では、副生成物が生成することによる目的物の収率低下が見られた。本反応は-78℃では進行しないため、徐々に-40℃まで昇温させ、なおかつ副生成物の生成を抑制するため、反応を途中で停止させて最高収率67%補正収率81%という結果を得ていた。今回、反応温度と時間を詳細に検討した結果、同様なアルデヒドに対して-60℃で2日~4日かけることにより副生成物を生成させることなく反応が終了し、82%の収率で、目的とする反応成績体を単一異性体として得ることに成功した。この反応成績体を用いて、胃潰瘍の原因菌ヘリコバクター・ピロリに高い抗菌活性を持つアクチノピロンAの初の全合成および絶対立体配置の決定を達成した。
 また、ケテンシリルN,O-アセタールと脂肪鎖アルデヒドとの反応成績体から、枝分かれ構造をもつ炭化水素鎖の立体選択的合成も実現した。すなわち、反応成績体のdelta位水酸基をスルホネートとした後、スーパーハイドライドを作用させてdelta位の脱酸素化と不斉補助基の還元的除去を同時に行い、枝分かれ炭化水素鎖を持つ1級アルコールの短工程かつ高立体選択的合成に成功した。本化合物から5‐リポキシゲナーゼ阻害物質ラグナマイシンの初の全合成および絶対立体配置の決定に成功した。
 この様に本特定課題研究により、ケテンシリルN,O-アセタールとalpha,beta-不飽和アルデヒド類との反応収率の向上と、反応成績体に対して適当な官能基変換を行い天然物合成に成功した。