表題番号:2006B-154 日付:2007/11/19
研究課題供与結合型白金-金属結合を有する錯体の合成と発光挙動
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 山口 正
研究成果概要
白金錯体として[Pt(thpy)2]および[Pt(dbbp)(en)]を,アクセプターとしてCdX2 (X = Cl, Br, I) を用い,四核錯体, [{Pt(thpy)2CdX}2(μ-X)2] (X = Cl, Br, I),および, [{Pt(dbbp)(en)}2(μ-X)2] (X = Cl, Br, I),をすべて合成しX線結晶構造解析を行った。何れも同様な構造をしておりPt-Cd間に金属−金属間結合が形成されていることが明らかになった。発光スペクトルの測定を行ったが,残念ながら溶液中では若干の解離が起こっていることが確認できたので過剰のアクセプターを共存させての測定を行った。前者についてはクラスターが形成されても発光スペクトルがほとんど変化しないか若干の強度の減少が見られるのみであったのに対して,後者は原料の白金錯体の発光と比べて発光スペクトルの長波長シフトおよびブロード化が見られた。空気飽和条件下ではクラスター形成にともなって発光強度の大幅な増大が見られたが,脱気条件下で測定を行ったところ原料およびクラスター錯体とも強度の大幅な増大が見られた。その結果,脱気条件下で比較で比較すると,原料錯体のほうが強度が大きく,クラスター形成にともなって強度が低下していることが分かった。空気飽和化での結果との違いは,酸素による消光の違いを表しており,[{Pt(dbbp)(en)}2(μ-X)2]が酸素消光に対して非常に耐性があるということを表している。これは供与結合型白金−カドミウム結合の形成により酸素分子が近づきにくくなったためだと考えられる。また,これらの錯体の発光寿命の測定を行ったところ,寿命が約十分の一程度になっていることが明らかになった。このことに加えスペクトルの長波長シフト,ブロード化していることから,発光の励起状態について,原料の白金錯体が配位子由来の励起状態からの発光であるのに対して,クラスター錯体では金属−金属間電荷移動遷移状態からの発光になっていると考察した。