表題番号:2006B-151 日付:2007/09/03
研究課題小舞土壁に用いる壁土の性質、調合および塗付け工程に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 輿石 直幸
研究成果概要
近年、地球環境保全、シックハウスなどの問題を背景に、伝統的な小舞土壁構法が注目されている。しかし今日では、地震や火災時の安全性など性能面での確認が必要となっている。構造耐力や防耐火性能に関しては、実大試験体を用いた実験が重ねられ、建築法規や関係する技術基準の見直しが進み、評価が向上している。しかしながら、壁土の品質や調合、塗付け工程などについては、施工品質や長期性能(耐久性)に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、これら材料学的な検討が遅れているのが現状である。本研究はこの点に着目し、2002年度から行っているものである。
本課題では、主に下記の3点について研究した。
(1)壁土の基本物性に関する試験方法の検討
 塗付けが容易に行えることは施工品質を確保するうえで極めて重要である。これに関係する代用特性としてコンシステンシー曲線がある。一般的には、JIS A 1205「土の液性限界・塑性限界試験方法」に準拠するが個人差が入り易いため、今回は、地盤工学会基準JGS 0142「フォールコーンを用いた土の液性限界試験方法」を併用し、両者の相関性を確認した。
(2)壁土成形体の一軸圧縮強度特性に関する検討
 昨年度は、粒度の粗い京都産の壁土を用い、圧力を加えて成形して圧縮強度を測定した。成形体の圧縮強度は乾燥密度および含水比に強く依存することを確認した。今回は、粒度の細かい滋賀産の壁土成形体と、発泡ビーズを混入して密度を低減した成形体についても、上記と同様の関係が成立することを確認した。これより、わらスサを含んだ壁土についても、その密度から圧縮強度の推定が可能であると考えられ、今後、確認する予定である。
(3)水合せ代替としての水溶性セルロースエーテルの効果に関する検討
「水合せ」という左官の伝統技術がある。数ヶ月前から壁土にわらを練合わせておくと、発酵してスサが分解して柔軟になり、同時に、壁土の粘性が増すといわれている。今回は、セルロースエーテルを少量添加することにより、類似の効果を確認した。