表題番号:2006B-144
日付:2007/02/14
研究課題バイヨン寺院の風速及び微動測定による崩壊過程の推定
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 前田 寿朗 |
- 研究成果概要
- 2003年度より,アンコール遺跡バイヨン寺院振動特性を微動測定振動特性により評価して,モルタル等を用いない空積組積構造物のモデル化に関する研究を行っており,今までにバイヨン寺院主塔・副塔,ならびにプラサートスープラの各塔振動特性および連続体等価なヤング率を評価している.2006年8月には,修士2年生1名および卒論生2名とともに,2~3週間にわたってバイヨン寺院内の北経蔵および南経蔵ならびにプラサートスープラN1塔およびN2塔で微動を測定し,それらの振動特性を求めて卒業論文としてまとめた.
修復済みの北経蔵と修復直前の南経蔵の比較により,修復により卓越振動数が若干増大した可能性が示された.修復が完了したプラサートスープラN1塔と修復されていないN2塔についても同様な関係が認められた.これらの卓越振動数について有限要素モデルにより連続体等価なヤング率を求めたところ,搭状の遺跡建物と同様に砂岩単体のヤング率の1/10以下の値が評価される結果となった.塔状構造物が壁のみで作られているのに対し,南北経蔵は柱・梁に壁の取り付いた構造であるが,評価されたヤング率は同様であり,構造形式によらず不連続なブロックの連続体置換時のヤング率は砂岩単体の1/10以下と評価されるものと考えられる.
バイヨン寺院の部分的な崩壊の要因として,風力および風に起因する地動が影響した可能性が指摘されている.それらの因果関係を探るために,2006年8月にバイヨン寺院主塔頂部に3成分加速度計と風速・風向計を設置した.定期的なバッテリー交換により,1年間程度の長期測定を行い,1年後に強風時の風速と加速度レベルに関する資料が得られる予定である.主塔については3次元測量データに基づいてより精密な連続体置換モデルを作製し,今までの知見について再確認を行った.また,不連続なブロックの集合として扱う方法についても研究しており,今年度の修論においては上述の北経蔵の一部についての検討を行い,風力については十分な耐力を保持しているという解析結果を得ている.