表題番号:2006B-137 日付:2012/05/18
研究課題自力避難困難者の多い施設の避難安全計画に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 長谷見 雄二
研究成果概要
高齢化に伴う高齢者施設の増加、バリアフリー化の進行に伴う公共施設の障がい者・高齢者の利用の増加等を背景として、災害時に自力避難できない在館者の多い施設が増加している。一方、火災時の人命安全は一般的には地上までの避難を前提としているが、こうした自力避難困難者の増加を防災的にどう補って人命安全性を確保するかは調査研究のレベルでも立ち遅れており、2005年頃からは高齢者施設等を中心に複数の死者を出す火災が発生し始めている。高齢化の更なる進行によって高齢者施設が増加すれば、その火災被害が大規模化したり、死亡火災が頻発化することが予想されている。
本研究は、高齢者福祉施設を中心に、自力避難困難者の居住実態と施設の防災管理体制を調査し、併せて、高齢者の行動能力を避難計画という観点から実測調査するものである。
本研究では、2000年以降、増加してきた認知症グループホームについて、東京都内の施設の悉皆調査を行い、多くの施設において、出火後早い段階で確実に消火・介助避難するための設備・管理体制が成立していないこと、居住者の要介護度は居住年数とともに進行し、避難上の困難が増加する傾向があること等を明らかにした。また、東京都の高齢者住宅(シルバーピア)で発生した火災の記録の悉皆調査を行い、高齢者住宅でも、認知症等の症状を伴わない場合は、生活様態によっては出火率が一般世帯よりもむしろ低下し得ること、出火後、早い段階で駆けつけることができる人がいることが高齢者施設の人命安全の向上に極めて効果的であること等を明らかにした。
一方、高齢者・障がい者の避難行動特性の実験的把握は、被験者確保の容易性のため、健常者に擬似高齢者体験用具を装着させて実施するのが通例であるが、実際の高齢者の行動能力を再現し得ているかについては疑問があった。本研究では、高齢者住宅の住民の協力を得て、実際の高齢者、車椅子使用者の歩行行動能力測定を実施し、擬似高齢者体験用具による実験方法の指針を誘導した。