表題番号:2006B-136 日付:2010/05/07
研究課題代数体上の有限クレモナ変換群に対するネーター問題と数論への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 橋本 喜一朗
(連携研究者) 理工学術院 教授 小松 啓一
研究成果概要

(1) 「ネーター問題」の研究に関して, 6 次の可移置換群の有理関数体への 2 種類の作用について,
研究した. 6 次の可移置換群は共役を除いて全部で 16 個存在するが, そのような群 G の各々に対して,
(i) 6 個の独立変数の置換作用に関する古典的なネーター問題および,
(ii) それらの複比が生成する 3 変数有理関数体 Q(x,y,z)への G のクレモナ変換作用に関するネーター問題
を考察し, これまでは未解決であった場合のうち, G=(6T10),(6T11),(6T14)について新手法によって固定体の
生成元を構成し, 同問題を肯定的に解決した.

(2) 6 次可移置換群のネーター問題と, 種数 2 の代数曲線のヤコビ多様体の 2 等分におけるガロア表現
との関連について研究を進め, 2 次のジーゲルモジュラー群のレベル 2 の主合同部分群に対するジーゲル
保型形式の次数付き環の商体に自然に引き起こされる商群 PGSp(2)= S_6 の作用が, 本研究と深く関連する
ことを明らかにした. この見地から, とくに可移置換群の作用に関する固定体の幾何学的構造の研究が可能
となった.

(3) 種数 2 の代数曲線のヤコビ多様体の 3 等分におけるガロア表現についても同様な研究を進めた.
特に, 一般 5 次方程式から定まる種数 2 の代数曲線上の trigonal な関数を特徴付けることに成功し,
これを用いてガロア表現の像が PGSp(3)になることを示し, その固定体を生成する40 次多項式を元の
方程式の係数から求める簡明な手順を得た. (4) 研究集会「ガロア理論とその周辺」を徳島大学理学部
において, 整数論研究集会を早稲田大学理工学部において開催し, この一年間の成果と今後の課題について
討論した.