表題番号:2006B-131 日付:2007/03/20
研究課題実用的分子デバイスの設計および制御に向けた量子化学計算手法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中井 浩巳
(連携研究者) 理工学術院 助手 山内 佑介
(連携研究者) 理工学術院 助手 星野 稔
研究成果概要
本研究の最終目標は、理論的手法に基づいた実用的分子デバイスの設計と制御である。そのために、ナノリンク分子の接合安定性と量子輸送現象を取り扱うための高精度な理論的手法の開発を目的とした。具体的には、電子および原子核の取り扱いに対する3種類のアプローチと電流に対する2種類のアプローチの融合を目指した。前者は主に量子化学理論を基盤としており、次のようなものである。第1が、Born-Oppenheimer(BO)近似により原子核の運動は分離して電子状態のみを扱う通常の分子軌道(MO)法や密度汎関数理論(DFT)などの量子化学計算である。第2は、原子核の運動を取り込むために、分子動力学(MD)法と組み合わせた方法がAIMD法である。更に、原子核の運動も量子的に扱えるものとして申請者らによるNOMO法があり、これが第3の方法である。後者は物性物理理論を基盤としておりKeldyshの摂動論に基づく非平衡グリーン関数(NEGF)法とKosovの定常電流Schrödinger方程式(CCSE)を直接解く方法である。本年度は、第1のアプローチに関して、従来定常状態にしか適用できなかったNOMO法を時間依存形式に拡張し、原子核の量子効果を考慮したダイナミックス(量子ダイナミックス)手法の基礎を確立した。また、第2のアプローチについては、AIMDシミュレーションのボトルネックである電子状態計算の高速化手法(LI-MO,LS-MO)を開発し、従来法に比べ3~5倍の計算時間の短縮に成功した。その他、分子-電極間安定接合の検証するために、我々が先に提案したエネルギー密度解析(EDA)を周期境界条件(PBC)計算に拡張した。さらに、このPBC-EDAが、表面構造の違いによる安定性・反応性の差異を定量的に評価できることを数値的に確認することができた。