表題番号:2006B-129 日付:2007/03/07
研究課題冷却システムを備えた血液ポンプ用メカニカルシールの潤滑特性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 富岡 淳
研究成果概要
 冷却システムを備えた血液ポンプ用メカニカルシールの潤滑特性を検討するために,インペラを取り外したシールしゅう動面のみを検討できる実験装置を開発した.それを用いて,しゅう動面での摩擦損失トルク,温度変化,漏れの観点から,人工心臓用メカニカルシールのしゅう動面の表面粗さが軸シール特性に及ぼす影響について検討した.実験には,表面粗さRa=0.009µm,Ra=0.088µmおよびRa=0.170µmの3種類を用いた.得られた結論を以下に示す.
(1)Ra=0.009µmのシートリングでは,しゅう動面間が非常に狭くなるため流体摩擦の影響が大きく,摩擦損失トルクおよび温度上昇が大きかった.一方,Ra=0.170µmのシートリングでは,局所的な混合潤滑も影響により,摩擦損失トルクおよび温度上昇が大きくなった.Ra=0.088µmのシートリングでは,すべての実験条件において摩擦トルクが最も小さくなり,トルク特性の観点からみれば現在使用されているRa=0.088µmのシートリングが最も優れていた.
(2)シールしゅう動面の温度変化を計測する手法を確立し,しゅう動面の温度特性を検討した結果,温度特性はトルク特性とよく似た傾向を示し,温度変化はRa=0.088µmのシートリングで最も低くなった.また,そのときの温度変化は0.3K以下に抑えられた.よって,温度特性の観点からみれば現在使用されているRa=0.088µmのシートリングが最も優れていた.
(3)Ra=0.009µmのシートリングを使用した場合,しゅう動面間が非常に狭くなり,シール面に対して両サイドの圧力差の影響を受けにくくなり,血液漏れ量および血液中へのクーリングウォータの漏れ量をともに少なく抑えることができた.漏れ量は,密封溶液漏れ量,クーリングウォータ漏れ量ともに0.03 ml/3hであった.そのため,漏れ量の観点からは現在使用されているRa=0.088µmのシートリングよりも,Ra=0.009µmのシートリングのほうが優れていた.