表題番号:2006B-125 日付:2007/03/14
研究課題ワイドギャップ半導体超高速スピン緩和の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 竹内 淳
研究成果概要
ワイドギャップ半導体超高速スピン緩和の解明のために、AlGaN/GaN MQW発光のシュタルク効果とキャリアスクリーニング効果の関わりと、InGaNに光励起されたホットキャリアの緩和過程を調べた。
 前者については、AlGaN/GaN MQWの時間分解フォトルミネッセンス測定の結果、AlGaN/GaN MQWの緩和時間とPLエネルギーがキャリア濃度に強く依存していることが実験的に明らかになった。これは窒化物半導体特有の大きな内部電場とキャリアによるスクリーニング効果を考えることで説明できる。この効果をシュレディンガー方程式と、ポアソン方程式を自己無撞着に解くことによって算出した。その結果、内部電場の大きさをフィッティングパラメーター(190 kV/cm)としてキャリア密度に対してPLエネルギーの変化量を計算すると、実験で得られた各励起光強度におけるPLエネルギーの変化量と比較的良い一致を得られることがわかった。上記のモデルがこの依存性をよく説明することが明らかとなった。また、励起光強度8 mW以上では、緩和時間は330 ps程度に収束しフラットバンドが実現されていると考えられる。
 後者については、InGaNバルクのバンド端よりも高エネルギーに光励起されたホットキャリアの緩和を調べた。サンプルはサファイア基板上に成長させた厚さ0.15 ミクロンのバルクIn0.05Ga0.95Nである。計測にはポンプ・プローブ時間分解吸収計測を用い、光源には極短パルスチタン・サファイアレーザの第二高調波または第三高調波を励起光として用い、プローブ光には第二高調波を用いた。測定系の時間分解能は光源に用いる光パルスの時間幅のみで決まりサブピコ秒である。測定の結果、立ち上がり時間は第三高調波励起の場合に0.9 psほど第二高調波励起より遅いことがわかった。これは、ホットキャリアの緩和に要した時間と考えられる。