表題番号:2006B-120 日付:2007/11/10
研究課題マウス時計遺伝子群のドパミン神経制御機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
本研究は2つの視点から成り立っている。ひとつは体内時計がドパミン神経の発現機構に影響を及ぼすかという視点である。もうひとつはドパミン神経の活性化が体内時計の同調因子となりうるかという視点である。まず前者の例として、ドパミン活性の指標としてドパミントランスポーター(DT)の発現リズムを調べた。その結果、ドパミン神経の豊富な線条体領域で、顕著なDTのmRNAリズムが認められた。特に夜間の活動期に高値を示した。体内時計のミュータント動物であるClock-/-, mPer2-/-のマウスでは、このようなリズムが消失した。以上の結果は、体内時計がドパミンの神経活性にリズム性の影響を及ぼすことを示している。次にドパミン神経の活性化や不活性化が体内時計に及ぼす影響について調べた。メタンフェタミンを飲水投与して出現するメタンフェタミン性リズムは線条体の6-OHDAによるドパミン破壊や熱凝固破壊により消失した。このことはこのリズム形成はドパミン神経が重要な役割を演じていることを意味する。次に線条体のドパミン神経細胞の起始核である黒質の破壊によってもメタンフェタミン性のリズムは消失した。このことは黒質―線条体のドパミン神経が正常でないと、メタンフェタミン性のリズム形成が起こらないことを意味した。次にオレキシン神経が破壊され、覚醒レベルが低下したマウスを用いてメタンフェタミン性のリズム形成を調べると、リズム形成が低下していた。このマウスの線条体のDTの発現を調べると低下し、メタンフェタミン投与によっても影響されなくなってしまった。以上の結果をまとめると、体内時計とドパミン神経は非常に密接な関係があり、メタンフェタミン性リズムがヒトの睡眠覚醒リズムを反映していることを考えると、黒質―線条体ドパミン神経系の睡眠リズムの形成に重要な脳部位といえる。