表題番号:2006B-118 日付:2007/04/26
研究課題子どもの行動刺激要素の心理学的解明による製品安全設計方法論の開発研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松原 明哲
研究成果概要
 特定課題研究(2004B-855:便益性を維持した上で安全性を設計し得る製品設計プロセスの開発研究)に引き続くもので、発達年代別の子どもの行動特性と事故との関係を、東京都内の保育所(3箇所)の調査を踏まえて明らかとし、さらに子どもの生活事故を防止するための製品設計の方法論を構築することを目指した。
 保育所での子どもの遊戯実態の観察、及び、事故やいわゆる“いたずら”実態に関するアンケート調査を実施したところ、子どもの事故のパターンとして次の3形態が明らかとなった。
【誘発的事故】子どもの興味を刺激する要素が生活環境(製品)に埋め込まれ、しかも、それがハザードと直結しているために生じる事故。例えば、小さなおもちゃを、ビデオデッキのテープ挿入口に入れるようないたずら(事故)であり、この場合には“小さなもの”“空隙”が刺激となり、“入れる”という行為が誘発されて、結果としていたずらを招いている。
【突発的事故】転倒、衝突、高所からの踏み外しなどであり、子どもにハザード認知が不足している、あるいは認知が出来ていても回避のための運動能力が不足しているために生じる事故。
【巻き込まれ事故】例えば、ベビーカが傾いた拍子に子どもが投げ出されることや、他の子どもが投げたおもちゃにあたり怪我をするなどのもらい事故。
 本研究ではこれら事故パターンの中でも、特に誘発的事故に注目し、その具体例を収集した。
 ここで誘発的事故については、誘発要素を生活の中から完全に排除したのでは、臨界期が刺激されず、その結果、行動活動量も制限され、子どもの健全な発達は望めなくなる懸念があることから、生活環境設計(製品設計)においては、リスクが許容される程度にまで減じることを方針とした設計や改善がなされることが望ましい。そこで本研究では、調査結果に基づき、子どもの行動刺激要素の製品内包性をチェックするためのチェックリストを作成し、さらにハザードを緩和することを方針とした、製品のリスクアセスメント手法を構築した。
(なお、本研究では、保育所調査などにおいて津田塾大学国際関係学科外山紀子助教授のご指導を得た。ここに記し謝意を表します)。