表題番号:2006B-117 日付:2007/03/23
研究課題ナノ粒子の3次元配列を用いる光キーと個人認証システム
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 進一
研究成果概要
 所有物の多次元光情報を利用する新しい個人認証システムの構築とその有効性の検証を通して,安全・安心な社会づくりとナノ粒子や近接場光学における未知の特性や現象の解明に貢献することをめざす。具体的には,ナノ粒子の3次元配列を情報とする新しいタイプの光キー(光の鍵)を作製し,偽造されにくく使いやすい鍵を実現することを目標とする。さらに,空間配列の3次元に加え,発光スペクトルに関連した波長次元や発光時間特性に関連した時間次元などを加えて鍵情報の多次元化を図り,さらに安全な鍵の開発を行う。
 本研究の最終目標はナノ粒子の3次元配列を用いる光キーの開発であるが,本年度の特定課題研究の予算内では実行できない。したがって本特定課題においては,上記最終目標の達成に向けた基礎固めを行うことを目的とし,ファイバーブラッグ格子(FBG)を利用する多次元光キーを主な課題とした。また,燐光物質の多次元配列を光キーとし,その発光の時間特性を鍵情報として利用することも検討した。
光ファイバーのコア中にブラッグ波長が異なる複数個のFBGを書き込み,その反射スペクトルを鍵情報として利用することを提案した。このようなカスケード接続したFBGの反射スペクトルをT-Matrix法で計算し,鍵情報として用いるのに十分な多様性をもつことを確認した。
 さらに,FBG内部に位相シフト領域を導入することでおきる共振現象を利用してより複雑で多様な鍵情報を生成できること確認した。
 アクリル板を加工して表面に3×3のアレイ状に穴を開け,そこに燐光物質を充填して2次元の光キーを作製した。白色LEDを照射して励起した直後の発光個所をマルチチャンネル観測し,3×3の各個所に該当する燐光物質が存在するか否かを調べ,0.1秒以下で鍵の識別ができることを示した。また発光の時間変化も鍵情報として用い,あわせて情報をデジタル化することによって,より誤りの少ない認識が可能であることを実験的に示すことができた。複数の異なる燐光物質を用い,それらの発光波長や時間応答の違いを利用することによって,さらに確実な鍵認識が可能である。また,今回の2次元アレイは積層して3次元光キーにすることが容易である。空間3次元,波長1次元,時間1次元を組み合わせて,5次元光キーが簡単に構成できることを示した。