表題番号:2006B-116 日付:2007/03/23
研究課題連続波長シフト多次元ハイブリッド・イメージング
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 進一
研究成果概要
 本研究の最終目標は,アナログ光学系とその出力像をデジタル処理する計算機を一体化したハイブリッド・イメージングシステムに対して,波長変数を新たに導入する多次元化を行い,結像システムの高機能化と高精度化を実現することである。
 連続可変波長光源を用いて波長変数を導入することを計画しているが,本年度の特定課題研究の予算内では実行できない。したがって本特定課題においては,上記最終目標の達成に向けた基礎固めを行うことを目的とし,ハイブリッド・イメージングのアルゴリズムの検討を主な課題とした。また,位相回復やブラインドデコンボリューションについては,デジタルカメラの撮像系を利用する簡易予備実験により,最適化アルゴリズムの開発も行った。
 ハイブリッド・イメージングシステムに用いる位相板をSA法によって最適設計した。その結果,複数の離散焦点を持つハイブリッド結像システムが実現可能であることを示すことができた。また,この方向で最適化する面の数を増やすと,従来の3次位相板に比べて非常に大きな焦点深度拡張効果が得られることを発見した。
 また,生体の免疫系をモデルとした免疫アルゴリズムをブラインドデコンボリューションに適用し,画像復元の有効性を検討し,従来手法との比較を行った。免疫アルゴリズムは遺伝アルゴリズムを基に構成されている。遺伝アルゴリズムは,比較的短時間で準最適解を得ることが可能である一方で,解の不十分な時点で集団の多様性が喪失し収束を遅延させる問題を含む。その改善方法として,免疫システムの持つ多様性のある抗体の生産機構とその自己調整機構を模倣した免疫アルゴリズムを用いることで,ブラインド・デコンボリューションの従来手法より早い収束性が期待できる。
 19×19の劣化像のシミュレーションにより,免疫アルゴリズムを用いたブラインドデコンボリューションの有用性を示し,従来手法より早い収束性を得ることができた。一方,遺伝アルゴリズムを継承しているため,局所探索能力に弱いという課題も残る。今後,さらに大きな画素の画像への改善が求められる。
 位相回復については,He-NeレーザーとAr+レーザーを用いて2波長の回折像を得,それをデジタルカメラで撮像したデータを使って位相回復実験を行い,良好な結果を得た。
 さらに,フィルターバンク法による3次元物体空間の再構築に関しても,ハイスピードビデオカメラを用いて,振り子の3次元運動の記録再生に成功した。