表題番号:2006B-114 日付:2007/04/03
研究課題CO変成用新規ペロブスカイト型酸化物触媒の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菊地 英一
研究成果概要
燃料電池用の水素製造においては、改質ガス中のCO除去プロセス(COシフト反応→CO選択酸化)が必要不可欠となっており,現在のPt電極性能では10 ppm以下へのCO濃度低減が要求される.COシフト反応には工業的にCu-Zn系酸化物触媒が用いられているが,PEFC特有のDSS(デイリースタートアップ&シャットダウン)運転では,酸化雰囲気に弱い従来のCu-Zn系酸化物触媒の使用は困難とされており,酸化雰囲気に強く,低温,高空間速度で高活性な新規触媒の開発が求められている.
本研究では高い酸素イオン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物に注目し,これを触媒担体として用いて,低温での水性ガスシフト反応を検討した.触媒の格子酸素が反応に寄与するRedox機構で進行させることができるのなら,DSSでの酸化に強い触媒系となることが期待される.さらにPt, Pdなどの活性金属を担持することで格子酸素の再生・放出を促進し,Redox領域の低温化を図り,検討を行った.
その結果、Pt, PdとLaCoO3を組み合わせた触媒を用いた場合、Pt/LaCoO3とPd/LaCoO3は高いシフト活性を示した.活性が低い触媒の反応前後の結晶構造はほとんど変化していないのに対し,高活性を示したPt/LaCoO3, Pd/LaCoO3についてはLaCoO3に起因するピークが低角度側にシフトし,ブロードとなる変化がみられた.これは反応中に格子酸素が放出され,ペロブスカイト型構造が歪んでしまったためと考えられる.また,Air処理による検討から,活性低下の原因と反応中での結晶構造の変化には相関がないと考えられる.XPS測定により,Pt, Pdの電子状態を解析した.その結果,Pt/LaCoO3ではPt2+-2がシフト反応に大きく寄与していることがわかり,活性低下の原因はPt2+-2が反応中に還元されるためと考えられた.また,Pd/LaCoO3ではPd種がRedoxしており,安定した活性種となっていることが示唆された.
これを受けて,安定なRedoxサイクルを進行するPd種がPt種の還元を抑制するようなシナジー効果を期待し,Pt-Pd/LaCoO3触媒を検討したところ,1 wt%Pt-0.5 wt%Pd/LaCoO3は商用触媒の活性を上回る高活性触媒となった.