表題番号:2006B-113 日付:2007/04/03
研究課題非Langumuir-Hinshelwood機構により進行する新規水素製造用触媒
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菊地 英一
研究成果概要
メタン水蒸気改質反応用Ni触媒としてペロブスカイト型酸化物を適用することで、工業的に用いられるアルミナなどの担体とした場合と比較し、高い耐炭素析出安定性が得られることが見出されている。これは担体中の格子酸素が反応に関与し、メタンがNi上に解離吸着して生成したCHXの酸化及び析出炭素前駆体の酸化除去を促進したためと考えられる。本研究では、H218Oを用いた過渡応答解析により、格子酸素が反応に関与するメカニズムの実証、また、格子酸素の挙動に影響する因子の検討を目的とした。実験では、ペロブスカイト担体として錯体重合法にて調製したLaAlO3, SrTiO3を用いた。これらペロブスカイトにニッケルを担持し触媒とした。反応における過渡応答解析は固定床常圧流通式反応器を用いた。反応は、あらかじめ水素気流で還元した触媒を用いて、反応温度1073 K,で行った。Heで60分間パージした後、CH4/H216O/Ar/He を60分間供給し、CH4/H218O/Ar/Heに切り替えて5分間保持し後、再びCH4/H216O/Ar/Heに切り替え、そのときの過渡応答を四重極形質量分析装置(QMS、HYDEN HAL201)により解析した。 
格子酸素によるCH4酸化実験より、触媒活性と、格子酸素によるCHXの酸化速度との間に相関あることが示唆された。また、H2Oからの格子酸素補充の検討を行ったところ、格子酸素の補充には担持金属が大きく影響しており、担持金属が酸化された状態では格子酸素の補充が行われないと考えられる。そして、H218Oを用いた過渡応答解析より、ペロブスカイト担体の格子酸素が反応に関与することが明らかになった。反応温度が高いほど反応に関与する格子酸素量は多いと考えられ、またCHXの酸化により関与すると考えられる。最後に、格子酸素の反応には金属-担体界面が大きく関わっており、Ni粒子径が小さいほど、反応に関与する格子酸素量が多くなることがわかった。