表題番号:2006B-112 日付:2007/03/20
研究課題ダイヤモンド電解質溶液トランジスタによるDNA高速計測
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 川原田 洋
研究成果概要
ダイヤモンドは物理的・化学的に安定であり、広い電位窓、生体適合性、表面修飾が容易であるといった特性を持ち、バイオセンサへの応用が期待されている。我々はこのような性質を持つダイヤモンドの表面を機能化し、電荷検出型バイオセンサである電解質溶液ゲートFET(SGFET)を用いて、DNAの塩基ミスマッチの検出を試みた。行った表面修飾は、水素終端表面の部分的酸素化およびアミノ終端化である。このような表面修飾を行うことで、target DNAの塩基ミスマッチを顕在化させ、一塩基多形(SNPs)の検出に成功した。チャネル表面に固定されたprobe DNAにtarget DNAがハイブリダイゼーションすることによって、チャネル表面の近傍に存在する負電荷の量が変化する。この変化は、ダイヤモンドの表面伝導層に影響を及ぼし、FETのドレイン、ソース間の伝導性を変化させる。この変化が、Vgsの変化として観測できている。Target DNAに塩基ミスマッチが存在すると、DNA二本鎖に熱力学的な安定性は低下する。そのためハイブリダイゼーション効率は低下し、結果的にチャネル近傍の負電荷密度はComp. DNAに対し低下する。このため、Vgsの変化は少なくなる。Comp.DNAをハイブリダイゼーションさせた場合、30分間のハイブリダイゼーションで、Vgsは約5mV変化した。
水素終端ダイヤモンド表面に部分的に修飾を施すことで、target DNAの塩基ミスマッチをSGFETの測定により検出することができた。これは、表面に存在する酸素終端の負の表面電荷による影響が働いていると考えることができる。表面が負に帯電することで、target DNAは反発力を受ける。この反発力は、表面へのDNAの物理吸着を抑制するとともに、probe DNAとのハイブリダイゼーションを阻害する方向に働く。この力が働くことにより、ハイブリダイゼーションの効率が変化し、より顕著に塩基ミスマッチを判別することができたと考えられる。このような、ダイヤモンドの表面修飾は非常に簡単なプロセスで行うことができる。