表題番号:2006B-108 日付:2007/03/16
研究課題固体高分子形燃料電池における電解質膜物性値の評価方法の確立および定量評価の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 勝田 正文
研究成果概要
近年,クリーンかつ高効率なエネルギ変換装置として,固体高分子形燃料電池が注目され,研究開発が推進されている.一方,同電池の電解質膜は,適度な含水を得ることでプロトン伝導性を発現するという特徴を有し,電池内の水分状態が電池性能や信頼性に及ぼす影響は極めて大きい.また,電池内の水分管理に対しては,電解質膜の水輸送特性が大きな影響をおよぼすが,その評価手法は未だ確立されていない.本研究では,電解質膜内に微細な白金線を挿入したセルを用い,膜抵抗分布および水蒸気透過係数の測定を行った.また,これらの実験結果にもとづきMEA各部における水蒸気輸送抵抗の分析を試みた.
実験には,電解質膜7枚と白金線6本を交互に積層させるとともに,両端の膜には電極触媒層とガス拡散層を付与したMEAを用いた.まず,両極に水蒸気活量の等しい加湿窒素を供給し,平衡状態における相対湿度と隣接する白金線間の交流抵抗(1kHz)の関係を把握した.次に,両極に水蒸気活量の異なる加湿窒素を供給し,上記と同様に隣接する白金線間の交流抵抗を測定し,MEA厚さ方向の膜抵抗分布を定量した.また,これと同時に高活量側と低活量側の入口ガスおよび出口ガス(計4点)の露点温度を測定することにより水蒸気透過量を求め, 水蒸気透過係数を算出した.
Pt線を用いた膜抵抗分布ならびに水蒸気透過係数の同時計測を行うことにより,以下の知見を得た.
①MEAの水蒸気透過においては,電解質膜内の水蒸気輸送抵抗のみでなく,ガス拡散層内や触媒層内および電解質膜界面における輸送抵抗の寄与が無視できない.
②したがって,極間水輸送現象の理解には,これらの輸送抵抗を定量化するとともに,その発現メカニズムを理解することが重要になる.
③電解質膜内における水蒸気輸送抵抗は,電解質膜の含水率が低い条件(電解質膜抵抗が高い条件)ほど高くなる傾向がみられる.