表題番号:2006B-106 日付:2007/03/18
研究課題東京における都市環境インフラの構築に関する調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 尾島 俊雄
(連携研究者) 理工学術院 客員講師(専任扱い) 増田幸宏
研究成果概要
東京における都市環境インフラの構築に関連して、風洞実験等の実験、実測調査、シミュレーション、現地調査、文献調査を組み合わせ、今後の研究展開に資する基盤的な要素について幅広く検討を行い成果を得た。研究は、1.人工系都市基盤・都市インフラに関連する研究、2.都市内自然資本に関連する研究、3.各都市の基礎調査、4.安全・安心確保のための関連基礎調査に分類される。特に、首都直下地震の切迫、事業継続計画BCPのISO化、東京オリンピック等の開催等に関連する社会的な要求を背景に、意義ある研究を行うことができた。研究助成に御礼申し上げる次第である。

日本橋川の高速道路撤去に関する都市再生プロジェクトに直結した下記成果は特筆に価するため、本報告にて紹介させて頂く。

■乱流境界層風洞を用い、日本橋川周辺地区の市街地模型における風速と風向を測定した。1)日本橋川上の風は、河口から約1kmの地点まで永代通りよりも高い風速を示すことが確認された。このことから、日本橋川が永代通り以上に海風の流入が期待できることが考えられる。2)各モデルの4m高さにおける日本橋川上の風速を比較すると、河口付近で全面撤去モデルが高い風速を示し、他の3つのモデル(現状モデル、部分撤去モ デル1、部分撤去モデル2)に比べて風速の減少が小さいことが確認された。このことから、河口付近の 低層化は日本橋川上の風速の増加に影響すると考えられる。3)日本橋川上の風は高架撤去及び河岸エリア低層化によって風速が増加する傾向が見られた。4m高さでは 風速比の平均は高架撤去により1.15、河岸エリア低 層化と合わせると1.35となった。4)河川に交差する街路上の風は高架撤去及び河岸エリア低層化の影響で風速が増加する傾向が見られた。4m高さでは河川に交差する街路上の風速比の平均 は高架撤去により1.13、河岸エリア低層化と合わせ ると1.23となった。5)現状モデルを基準とし、他の3つのモデル(部分撤 去モデル1、部分撤去モデル2、全面撤去モデル)の日本橋川上の風と河川に交差する街路上の風速の を比較すると、全面撤去モデルが最も高い数値を示した。このことから、日本橋川周辺地区の風速を増 加させる為には、高架撤去と河岸エリア低層化を合 わせて行なうことが最も効果的であることが考えられる。6)日本橋川から約200m市街地へ入ったところまで3つ のモデル(部分撤去モデル1、部分撤去モデル2、全 面撤去モデル)への風速の増加が見られ、高架撤去 と河岸エリア低層化による風速増加の範囲は日本橋川から約200m市街地へ入ったところまで及んでいる可能性がある。7)高架撤去と河岸エリア低層化による風速の増加の割合を比較すると、日本橋川上では高架撤去による影響が大きく、河川に交差する街路上では河岸エリアの低層化による影響が大きいことが考えられる。