表題番号:2006B-099 日付:2007/04/19
研究課題スペイン・カタロニアの伝統的石造民家(マジア)の修復・再生に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 入江 正之
研究成果概要
本研究はスペイン、カタロニア州バンデジョス/ロスピタレット・リンファント市ファッチェス離村集落において、集落を形成する住棟のうちのA棟のマジア(カタロニアの伝統的石造民家)の修復、再生研究である。対象であるファッチェスのマジア残存遺構、A棟の3層構成の部分(A-1棟)に絞り、作業に従事した。A-1棟は修復・再生の方法における残存するマジア壁体を維持し、新しい機能(建築学ワークショップ棟)を付帯する鉄架構体を内・外部に配する方式の適用部である。マジアに関する文献による継続研究からその来歴、空間的特質、内外部各室、各部の概要、変遷過程を概括するとともに、現地の左官、下地職などからの聞き取りによるマジアの工法の解明を行った.同時にA-1棟修復・再生のための平面、立断面、矩計の基本各図、内部鉄壁体割付詳細図、屋根部および出入り口・窓等の開口部建具の詳細図、内・外階段詳細図のCADならびに手書きの図面作成、それに基づいたS.1/20模型制作を行った。この日本における基礎的作業を背景として、カタロニアのバンデジョス市、バルセロナ建築大学の協力を得て、ファッチェス残存遺構現場において大別して、二つの作業を行った。一つは残存する壁体の保持であり、もう一つは具体的な建設作業である。前者においては前年度の素材分析より壁の充填材である石灰入り粘土(アルガマサargamasa)にエフロエッセンス現象が多く見受けられるため、残存壁に色調、肌理を考慮したモルタルを外壁、内壁の欠損部に充填補強を行った。後者においては、今後に行われる室内温熱環境、室内空気質測定、歴史的建築物等の建築ストックの現代的適用への試験体制作である。まず始めに現場における残存浚渫物撤去後の平面、並びに高さ方向の実測寸法取り、それに伴う原設計図の修正施工図の作成を行った。日本とスペイン・カタロニアの部材寸法、製作の仕方の相違を確認し、相互調整ための意匠、構造設計者と鉄骨架構体製作者の3者打ち合せを行い、現地での建設方式を決定した。現在、3階建て内,外構造骨組み、屋根架構、一部鉄壁体,及び建具等までの施工が完了した段階である。