表題番号:2006B-071 日付:2007/03/20
研究課題「国語科教育法」の授業改善に関する研究―教育現場との連携を求めて
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 町田 守弘
研究成果概要
 教職課程科目「国語科教育法」は、国語教育の研究と現場の教育実践を結ぶ大切な科目として把握できる。今回の研究では、「国語科教育法」の授業改善のための基礎資料として、中等教育現場の現状の把握に主眼を置くことにした。大学院で担当する研究室の2006年度修士課程1年および2年の院生の協力を得て、2回にわたって全国の中等教育現場を対象としたアンケート調査を実施した。この調査結果を整理・分析することによって、教育現場における学習者の現状を把握し、それをそのまま「国語科教育法」の授業改善に生かすことを目標に据えた。
 ここでは修士課程2年の院生を中心とした研究チームによるアンケートに言及する。調査を実施した時期は、2005年10月から12月にかけての期間で、あらかじめ調査に協力可能な学校を確定してからアンケート用紙を届けることにした。この調査では、学習者とともに指導する国語科の教師を対象としたアンケートも同時に実施した。結果として関東地方を中心とする中学校・高等学校から回答が寄せられた。ちなみに、回答が届いた学校と人数は次のようになっている。まず学習者の状況である。
  中学校   17校   1394人    高等学校  30校   3407人
 続いて、担当教師の状況である。
  中学校   16校     33人    高等学校  29校     88人
 なお男女比は学習者・教師ともおおよそ半々である。
 今回の調査結果に関しては、すでに小冊子『国語科教科書教材の受容に関する実態調査―新教材の開発に向けて―調査報告書』(早稲田大学大学院教育学研究科町田守弘研究室、2007.2)にまとめて公にした。ここでは例として、最初の質問項目のみ紹介する。最初の質問事項は学習者の日常生活に関するもので、携帯電話とインターネット使用の実態を問うものである。まず携帯電話の所持率だが、中学生は70パーセント、高校生は95パーセントと、ほとんどの学習者が所持しているという実態が明らかになった。アンケートが学校で実施されたという状況を勘案すると、実態として所有率はこの数値よりさらに多いものと思われる。そして、平均してどの程度メールをするかという問いにたいしては、中学生は1日に30から50回程度、高校生は1日に10回程度という回答が最も多い。続いてインターネットの使用に関しては、中学・高校生とも2、3日に1回程度という回答が最も多かった。「今までで一番感動したこと」に関する質問では、最も多かったのは「テレビや映画を観たとき」であった。メディアが学習者に与える影響の大きさを物語っている。その一方で、「感動したこと」や「楽しかったこと」の上位に「部活動」や「友達と遊んだこと」「旅行に行ったこと」が挙げられている。メディアの影響とともに、やはり現実に体験したことの重さは学習者の中で確かな位置を占めている。以下、具体的なデータは前掲の小冊子に紹介した。
 ところで「国語科教育法」ではどのようなことを授業の目標にするのかという点について、主に以下のような点を中心に「国語科教育法」の目標を考えている。
(1)国語科教育の今日的課題に関する受講者の認識を深める。
(2)受講者が自ら問題意識を持って自主的に授業を構想し、実践することができるようにする。
(3)国語科教育に関する興味・関心を喚起し、受講者の教職に対する意識を高める。
 以上のような目標を設定したうえで、基本的な授業の方向としては、特に次のような点に留意することにしたい。
(1)「国語科教育法」の授業そのものをテクストとした、入れ子構造型の授業を目指す。
(2)大学の「国語科教育法」の授業と中学・高校現場との交流を可能な限り実現する。
(3)講義法による展開に偏らず、研究発表や模擬授業を取り入れた実践的な内容を工夫する。
(4)受講者との対話を密にする。
(5)学部学生と大学院の院生との交流を図る。
 今回の研究は、教育現場の現状を明らかにするものであり、授業改善に向けての基盤作りに資するものであった。