表題番号:2006B-066 日付:2007/03/24
研究課題18世紀から19世紀への転換期における〈人間〉の発明に関する身体表象論的考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 神尾 達之
研究成果概要
 本研究は、ヒトが〈人間〉(フーコー風に言えば〈人間〉という「図柄」)として表象されるに至るプロセスでとられた二つの操作とその結果を明らかにすることを目的としている。全体の問題構成は下記のようになる。
0.〈人間〉概念の内部の充実と〈人間〉概念に属さないものの外部への排除の歴史的共在
1.〈人間〉概念の内部の充実
1.1.〈人間〉の定義の変移
1.2.人間機械論の言説化と具象化
1.3.〈人間〉によるヒトの創造
1.4.鳥瞰的な視線
1.5.観相学
1.6.Bildung(教養)の概念化と文学化
2.〈人間〉概念に属さないものの外部への排除
2.1.野生児の出現と消滅
2.2.ドッペルゲンガー
2.3.不気味な歩行者
本研究は本来、四年計画で実行する予定であったが、特定課題研究は単年度の申請となっているので、本年は「1.5.観相学」と「2.3.不気味な歩行者」に考察領域を限定した。この二つの考察領域は、18世紀末、それまでのスタティックな観相学が都市化の波に影響を受けてダイナミックな観相学へと変わっていったこと、および、観察主体自身が特権的な客観性を保持することができなくなり、自らも移動をよぎなくされたこと、この二点で深く関係している。観察主体は世界を鳥瞰的に見下ろす客観性を喪失し、地上において自らも観察されるようになる。19世紀初頭にはやくも〈人間〉という「図柄」の輪郭線があいまいになってくる。